ビジネス

2020.03.27 17:00

対GAFA「日の丸連合」 トヨタxNTTは世界を変えるのか


NTTはラスベガスやマレーシアなど海外でもスマートシティの実証実験をはじめている。それでも、GAFAに対抗するとなると、そうシンプルなストーリーではない。

「通信の巨人」であるがゆえに、グループ会社が多岐にわたり過ぎ、「右手がやっていることを左手が知らない」ケースなども散見される。R&D部門などに優秀な人材を集めているが、そうしたリソースをひとつのプロジェクトに対し、グループ内で集約させなければ、対抗策は生まれないだろう。

また、ビジネス構築の分野では、机上の空論に費やす時間が長過ぎる。Le congrès danse …会議は踊るされど進まず。マイクロソフトならひと月で決定できるようなプロジェクトにNTTグループでは1年や2年かかるのはザラだ。そんな企業がGAFAのようにスピード感の塊のようなアメリカ企業にどう対抗して行くのか。

特にAI分野においてはドコモ社内の若手から「日本がグーグルに勝つのは、もう不可能ですよ」という声が上がるほど。その心は、AI開発に必要不可欠なのはデータ。インプットするデータ量でグーグルに勝る企業は地球上に存在しない。

よしんばに追いつけたとしても、その時グーグルははるか先を走っているだろうとのこと。もちろん、今回のテーマはあくまで「スマートシティ」であって、AI単体分野における連携ではない。しかし、高速通信網とAIはスマートシティ具現化の鍵でもある。

トヨタのスマートシティ・イメージ図
トヨタが発表した実証都市「Woven City」のイメージ図。人々の暮らしを支えるあらゆるモノ、サービスが情報で繋がる時代へ

10年後に予見される「6G時代」に向けた狙い


現場でビジネス開発に従事し、各メーカーと会話を重ねれば重ねるほど、すべてのメーカーが、業種が、ひとつの将来に向け、同様の開発を推進している……と錯覚する国内のビジネス領域は近接してきている。NTTと新興ECサイトの楽天が、いつの間にか競合となっている点など、その現れだ。その潮流を踏まえると、国内企業もいつかはGAFAと対峙せざるをえない。そうした自然の流れに、対応する決意の現れと受け取るべきだ。

NTTが得意とする通信の分野において、国内での優位性が揺らぐことはないだろう。しかしドコモが3月からスタートさせた5Gに関連する技術では、サムスンやファーウェイなどが、これまで研究開発を牽引して来た。2030年に導入が予見される6G時代に向け、形勢の逆転を図る意図もあるだろう。

さて、両社はどうGAFAに対抗するのか。日本の二大巨大企業の提携のため、人、カネ、モノで劣るようには思われない。しかし、その具体的方法論については、行く末を見守るしかなさそうだ。

10年後に振り返った際、この日が歴史的提携の発表となるのかどうか、「日の丸連合」、日本大企業のタッグの実力を見守りたい。

文=松永裕司

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