さらにもうひとつ、山川が構想するのが、葬儀などの「死」を起点にした事業だ。これまで20代で就活支援や結婚式ビジネス、30代で大人に向けた式場の立ち上げにチャレンジするなど、自らの人生に沿うようにそれぞれの事業を始めた山川が、40代を前に考えたのは「死ぬまでのプロセス」だった。
「親世代が亡くなったり、不慮の死が増える中で、どうやって死の準備をすればいいのかを考えていました。明日死ぬかもれない世界だからこそ、生が輝くはず。答えのないなかで、ひとつの選択肢として私なりの死へのプロセスを社会に訴えていきたいと思いました」
中学生のときの夢が「お葬式のプロデューサー」だったという山川。当時から葬式に関する本を読んだりしていたが、傷つきやすい自分がたくさんの「死」と向き合う覚悟が持てず、最初に選んだ事業が「結婚式」だったと明かしてくれた。
しかし、昨年はじめて追悼展示のプロデュースをしたことをきっかけに、「死」に関する事業への思いが強まった。亡くなった後にまわりの人々が持っていた思い出を集めることで、はじめて完成する空間があることを悟ったのだという。「20代で結婚式に感動するのだから、60代でお葬式に感動しないわけがない」と山川は考える。
「起業したり、子どもが生まれたりなど、大きな転機には想像以上の感動がありました。自分が想像している以上に人生はドラマに満ちている。その素晴らしさを、少しでも多くの人に伝えたい。生まれてから死ぬまでの間に、そんな感動の小さな爆発をたくさん起こせるような事業をずっとやっていきたいと思います」
やまかわ・さき◎CRAZY WEDDING創設者。1983年東京生まれ。大学卒業後、ベンチャーのコンサルティング会社へ入社。退職後に単身オーストラリアへ。「意志をもって生きる人を増やしたい」と考え、2012年に業界で不可能と言われた完全オーダーメイドのウェディングブランド「CRAZY WEDDING」 を立ち上げた。その後、産休・育休を経てIWAI OMOTESANDOの立ち上げに携わる。2020年3月27日にCRAZYを退任し独立。現在は複数の新事業を検討中。