経済・社会

2020.04.02 19:00

来日前に厳格な健康診断を受けて入国する外国人は、だれなのか

飛行機に乗って待つ人

飛行機に乗って待つ人

新型コロナウイルスの感染が世界的に広まる中で、世界中で「人の移動」に制限がかかり始めました。日本に限っていえば、感染者は必ずしも外国人だけでなく、中国に住んでいた日本人やヨーロッパ旅行・出張から帰ってきた日本人もいるとのことなので、「外国人がウイルスを連れてくる」かのような印象は決して事実に基づきません。

一方で、今回のウイルスの発生源が中国・武漢であることはかなり確かなようであり、「外国人が増えると感染症も広まってしまうのでは」といった不安感を抱く方々が出てきてしまうのも仕方のないことでしょう。

では、日本にやってくる前に、最も包括的で厳格な健康診断を確実に受けてから入国する外国人は一体だれなのでしょう? 外交官でしょうか? それとも大学の教員、ビジネスパーソン、留学生、技能実習生、観光客、あるいは日本人の家族となった外国人でしょうか?

この答え、実は難民なんです。

例えば外交官であれば、出身国政府の基準やルールに従うのが基本で、外交特権もありますし、日本政府の要望や基準を押し付けるわけにはいきません。大学教員の場合、健康診断を採用前・来日前に義務付けるのか、またどのような内容なのかは雇用する大学によってバラバラでしょう。それはビジネスマンパーソンも同じです。

留学生の場合、国費留学なのか私費留学なのか、また奨学金などの出資元によっても基準はマチマチです。技能実習生については、来日して雇用された後に雇用主が健康診断や健康管理を定期的に行うことが義務付けられていますが、来日前に健康診断を受けてきているのか不明です。

昨年4月から運用が開始された「特定技能」については、ビザ申請時に健康診断票を提出することが新たに義務付けられましたので、この点については一定の「改善」と捉えられますが、どれだけ本格的(かつ信憑性のある)健康診断を受けて来るのかは、出身国によって差が出てしまう可能性もゼロではありません。

更に心配なのが観光客。日本政府の「観光立国」政策により2018年・2019年は年3000万人を超える外国人観光客が来日していますが、彼等に健康診断は義務付けられていません。

来日前のビザ取得が義務付けられている国(その多くは途上国)であれば、一定の来日前スクリーニングは可能かもしれませんが、ビザ免除されている先進国の中でも例えばアメリカには、anti-vaxxerといって強固なワクチン接種反対派もいますので、先進国出身者だからといって感染症を持ち込まないという保障は一切ありません。
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文=橋本直子

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