ビジネス

2020.03.27 16:30

「禁断」の領域を可視化するデータドリブン・トイレの可能性

「ゲームチェンジャー賞」を受賞した木村技研代表取締役社長の木村朝映

規模は小さいけれども、世界を変える大きな可能性を秘めた企業を讃えるフォーブス ジャパンの「スモール・ジャイアンツ アワード」。地方大会を含めて、過去最大の規模で実施した第3回目となる今年は、グランプリを含めて19社が受賞企業となった。そのうちの1社が、「ゲームチェンジャー賞」を受賞したトイレシステムメーカーの木村技研(東京都世田谷区)だ。

かつて小さな水道設備工事会社だった木村技研が、どうやってオリジナルのトイレシステムを生み出し、データを駆使したビジネスモデルを構築したのか。そのプロセスを知ることは、逆境に直面するすべての企業にとってビジネスのヒントとなるはずだ。


トイレの個室は究極のプライベート空間。通常はほかの人の使い方を知ることはできない。しかし、それをデータで間接的に可視化すると、意外な事実が浮かび上がってくる。

例えば、女性のほうが水をたくさん使うイメージを抱いている人は多いかもしれないが、実際は違う。ある公共施設のトイレでは、女性の洗浄回数が平均1.2回に対して、男性が1.8回。実は男性のほうが水をよく流すのだ。

こうしたデータをIoTで収集・分析して、節水効果の高いトイレシステムを提供している小さな会社がある。東京都に本社を置く木村技研だ。

データを活用してどうやって節水するのか。一例をあげよう。便器の種類によるが、大なら10l、小なら5l流すタイプがある。本来は大と小で流し分けるべきだが、多くの人は小のときでも大のボタンを押してしまう。木村技研はセンサーでトイレの着座時間を把握。一定の時間を過ぎれば大と判断して10l流し、短ければ5l流す制御を自動で行う。

ある施設の女性用トイレの事前調査では1室で1日に大が12回、小が63回で、圧倒的に小が多かった。小のときに適切に流せば、1室1日だけで5×63l=315lの節水になる。
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文=村上 敬 写真=佐々木 康

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