ビジネス

2020.03.27 16:30

「禁断」の領域を可視化するデータドリブン・トイレの可能性


便器そのものも節水タイプ。また、裏側にある排水管も適切な勾配をつけて、少ない水量で汚物が詰まらずに流れる設計になっている。電子制御と物理的設計の両面で節水を実現するのが同社のトイレシステムの特徴だ。社長の木村朝映は、その効果を次のように明かす。

「使用水量は約半分になります。東京都でトイレに使われる水量を人口から推計すると1日168万t。半分になれば水道料金は1日6億7,200万円削減できます。CO2排出量に換算すると、年間21万t。杉の木なら年間15万本の環境効果に相当します」

顧客は、ビルや施設のオーナーだ。43台のトイレを備える某ビルではトイレの水道料金が年間539万円だったが、導入後は275万円に。ビジネスモデルは売り切りではなくレンタル型。初期費用は不要で、ハードのレンタル費と節水による削減コストの一部を支払う仕組み。その料金を差し引いても、年間132万円の経費削減になった。


木村技研が開発したトイレバルブ。基板が内蔵されており、流量を遠隔でコントロールできる


料金にはメンテナンスの費用も含まれている。もともと水道代の削減になるうえに、故障など不測の事態にも原則無償で対応してもらえるのはありがたい。ただ、故障が多ければ、そのたびに人を出す木村技研は利益が出なくなる。それでもメンテナンス込みにできるのは、滅多に故障が起きない自信があるからだ。

ここでも活躍するのはIoTである。木村技研はトイレに取り付けられた各種センサーのデータを、本社のデータ管理センターでモニタリング。それをもとに、先手を打ったメンテナンスをしている。

「トイレごとに座った回数やバルブの作動回数をカウントし、一定の回数を超えると部品を交換したり、配管に薬剤を流して洗浄したりします。漏水や詰まってから修繕すると一時的に使えなくなって利用者が困るし、修繕費も多額となり馬鹿になりません。故障の事前予防を目的に保守・保全したほうが、 最終的に手間やコストの負担が軽減できます」
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文=村上 敬 写真=佐々木 康

この記事は 「Forbes JAPAN 5月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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