経済・社会

2020.03.26 18:00

「有事の金」は神話だったのか? 現在の金相場が低調な理由

OscarDominguez / shutterstock.com


ヘッジ資産としての役割の低下


最後に考慮すべき要素は、ヘッジや避難先とされてきたいかなる資産であれ、どんな危機においてもその役割を果たすという保証はない、という点だ。例えばこれまでの危機では、原油が最高のヘッジとなったケースがある。これは、原油価格の急騰がそもそもの危機の原因となっていたためだ。しかし今回の危機では、原油価格は株価をも上回るペースで急激に値下がりしている。
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金融危機において金が値を上げるケースが多いことは、大半の学術研究で裏付けられているとおりだ。だが、常にそうとは限らない。例えば、インフレがさらに進むことが予想される状況では、金は富の蓄積手段として有用だ。しかし今回の危機では、今のところこの点はあまり懸念されていない。

今後の展開は


今回の危機はまだ進行中だ。この記事で分析した価格の変動は、明日にでも、全く違う状況に転じる可能性もある。株式市場の急落に伴って金の価格が上昇しなかったことは、確かに予想外の展開だが、あり得ない話ではない。おそらく、金に投資した人たちにとってより気がかりなのは、株式市場の暴落が落ち着いた後、株式市場はしばしば上昇に転じるが、金相場は低調になるという可能性だろう。

危機が現在も進行中であるため、金の現在の値動きは、過去の事例と比べると異例であるように見える。だが、経済活動の急激な減退や、極端に現金を重んじる動きも、それなりに異例なことと言えるだろう。

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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