米国、コロナパニックで弾薬・銃の販売急増 多くは初購入者

Anadolu Agency / Getty images

トイレットペーパー、手指消毒ジェルに続き、弾薬も──。米国では今、新型コロナウイルスの流行を受け、銃と弾薬を購入する人が急増している。

バージニア州リッチモンドの銃販売店「Town Gun Shop」のマーク・トッシュ社長は、この異例の需要増加について「39年この仕事をしてきたが、こんなことは経験したことがない」と語った。同店では需要の急増を受け、9ミリ弾20発入りの箱を1人につき2個までとするなどの購入制限を設けた。

メリーランド州ボルティモア近郊の銃販売店「Tyler Firearms」でも、商品の売り切れが相次いでいる。コロナウイルス流行の影響で店には客が押し寄せ、電話での問い合わせも1日300~400件に上る。同州では23日、州知事が必須ではない店舗すべてに休業を命じたが、銃販売店はその対象外となっている。

米国では、銃産業に悪影響が生じるような出来事の後に銃や弾薬の売り上げが伸びることはよくある。例えば銃乱射事件が起きると、銃規制強化の可能性が浮上し、銃器の需要が急増する。

今回の需要増をもたらしているのは、目に見えないウイルスの脅威、そして全米が急速に非常事態へと陥ったことによる恐怖と、集団パニックだ。多数が自宅待機を強いられる中、人々は恐らく、世界の終末を舞台とした『ウォーキング・デッド』などのドラマの人気や、ウイルス上陸を予期していながらも十分な対策を取らなかった政府の怠惰に影響され、まるで地下シェルター生活に備えるかのように食料や日用品をためこみ、さらには銃をも集め始めている。

銃購入時に行われる身元調査の件数は2月21日~3月1日の期間で79万7221件と、1998年以来の高水準となった。トッシュの店では需要がかつてないほど高まっている上に、銃を初めて購入する人も増加。「これまでずっと銃反対派だった人たちが購入している」という。

アラバマ州のある銃販売店では、わずか1週間で2カ月分の売り上げに相当する弾薬を販売した。この店にもまた、多くの初購入者が訪れている。客たちはオーナーに対し、警察の間で感染が広まったりした場合に自分を守ってくれる人がいなくなることが心配だと話している。さらには、ウイルス拡大の責任を押し付けられることを心配したアジア系の初来店者も増えているという。

コロナウイルスの影響で株式市場が動揺する一方、銃の売り上げ急増は関連企業の株価上昇につながっている。多数の弾薬製造会社を傘下に抱えるビスタ・アウトドアの株価は今年8%上昇。一方のS&P500種株価指数は同じ期間で25%も下落した。スミス&ウェッソン傘下のアメリカン・アウトドア・ブランズの株価は今年、13%下落していたが、今週は3%上昇した。

アラバマの銃販売店オーナーは冗談交じりにこう語った。「トイレットペーパーと冷凍肉を集めたら、次にそれを守らなくてはね」

翻訳・編集=遠藤宗生

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