テクノロジー

2020.03.26 06:45

回線を合理的に使い分ける「eSIM」 使い方とメリットは?


iOSでは、音声通話は回線Aを優先、データ通信は回線Bを優先などと用途別に回線を使い分けできる。「データプラン ゼロ」はデータ通信専用サービスのため音声通話やSMSには使えないが(020から始まる番号が割り当てられるが架電/着信できない)、FaceBookメッセンジャーなどSNSの音声通話には支障なく使える。

iPhone 11でeSIM/データプラン ゼロを3日間利用して実感したのは、eSIMは補助回線として有用だということ。今回物理SIM/主回線に利用したauと、eSIM/副回線のIIJ(eSIMはドコモ網を使用)とでは利用する周波数帯に違いがあるため、折々の通信品質や受信感度はまったく同一ではないものの、電話機としての機能にまったく影響をおよぼすことなくデータ通信を安く利用できた。


コントロールセンター左上には、主副回線の状態が表示される

今後、通信キャリアの最安価プランで電話番号とメールアドレスをキープし、データ通信はeSIMで安くあげる、という消費者は増えるはずだ。改めて、SIMを物理的に差し替える必要がないところもいい。

選択肢はごく少数だが有用


利便性を実感すると、いち消費者としては競争原理の発動を期待したくなるところだが、eSIMを扱えるのは自社でSIMを発行できる「フルMVNO」( 加入者管理システムやコアネットワークを備え、自社ブランドで移動体通信サービスを提供できる能力を備えたMVNO)でなければならず、数は限られる。

実際、eSIMサービスを提供する国内フルMVNOは3月23日時点ではIIJとソラコムの2社のみ、NTTコミュニケーションズと丸紅ネットワークソリューションズがフルMVNO対応/eSIM参入を表明してはいるものの、競争原理が働き始めるまでには時間を要しそうだ。

また、3大キャリアがいますぐ積極方針に転じるとは考えにくい。手軽に回線を変更できる手段の出現は、急激な顧客流出というリスクの顕在化を意味するからだ。一方、新規参入の楽天モバイルは音声通話対応のeSIMサービスを提供、eSIM専用端末の「Rakuten Mini」も投入するなど、顧客獲得の材料として活用している。

参入企業も通信プランも選択肢はごく少数という現状ではあるものの、5Gサービスの開始やeSIM対応端末の増加という市場環境もあり、好むと好まざるとにかかわらず普及が進むと見るべきだろう。

文=海上 忍

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