回線を合理的に使い分ける「eSIM」 使い方とメリットは?

eSIMではSIMの抜き挿しなしに回線を変更できる

通信・通話に必要な契約者情報が記録された小さな接触型ICカード「SIM(シム)」。契約する通信キャリアから貸与され、スマートフォンなど情報携帯端末に差し込み利用する。電話番号やデータ通信サービスはこのSIMに紐付くため、SIMを他のものに挿し替えるだけで、同じスマホのまま他の通信キャリアへ移行できてしまう。

ここ数年で利用者が増加した「格安SIM」は、その名のとおり安さが特長のSIM。仮想移動体通信事業者(MVNO)が大手通信キャリアからから無線通信インフラを借り受け、保守費や人件費を抑えることでより安価な通信サービスを提供する。時間帯によってはベストな通信速度を得られない、家族割引や通話料金定額プランが少ないといったデメリットもあるものの、市場の拡大傾向は続いている。

そこに登場した新たな選択肢が「eSIM(イーシム)」だ。スマホ内部に埋め込まれたIC(チップSIM)に通信・通話に必要な情報を記録することで、SIM相当の機能を実現するというもので、インターネット経由で通信キャリアの情報を書き換えられるため、SIMの差し替えなしに携帯電話会社を変更/追加できる。1枚につき1つの通信キャリア/契約しか記録できない従来型SIMとは異なり、複数の契約を記録できることも特長だ。

海外では多くの通信キャリアがサービスを提供しているeSIMだが、日本では3大キャリア(ドコモ、au、ソフトバンク)が積極方針ではないこともあり、セルラー版Apple Watch向けにメイン回線のオプション扱いで提供する程度に留まる。

国内最多の利用者を擁するiPhoneシリーズも、iPhone XS/XS Max/XR以降のモデルはDSDS(Dual SIM Dual Standby:1台で2つの通信サービスを利用できる機能)に対応し、国内でもeSIMを利用する環境は整いつつあるが、消費者には縁の薄いサービスという状況が続いている。

かんたんな手続きで利用開始


3月18日にインターネットイニシアティブ(IIJ)がスタートした「データプラン ゼロ」は、事実上、初のスマホ向けSIMサービス。データ通信専用サービスであり、iPadのような音声通話のニーズが低い端末、あるいはDSDS対応スマートフォンで音声通話契約がある物理SIMと組み合わせた利用が想定されている。2019年7月からベータ版が提供されているが、今回、料金体系が一新されている。

「データプラン ゼロ」の利用料は、月額利用料(150円)とeSIM専用データクーポンの組み合わせで決定される。毎月1GBまでは300円、以降1GBにつき450円が加算される仕組みで、利用がなかった月は150円のみの支払いとなる。初回のみ初期費用(3000円)とSIM発行手数料(200円)が発生するが、1ギガ=1000円で横並びしている3大キャリアのチャージ料金と比較すると格安で、6カ月ほどで元が取れる計算だ。
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文=海上 忍

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