「いまだけ、ここでだけ」。空間コンピューティングが生み出す新世界 技術的視点から#読む5G

サムネイルデザイン=高田尚弥

「5G」をめぐるこれまでの連載では、通信産業をP(Politics)・E(Economy)・S(Society)の3つの視点から、来るべき時代の社会像について考察しました。今回は、最後のTの技術的視点(Technology)から考えたいと思います。

ソフトバンクやNTTドコモより、5Gの料金プランが発表されました。料金プランや5Gスマートフォンとともに、5Gサービスも発表されています。それはVR(Virtual Reality、仮想現実)やAR(Augmented Reality、拡張現実)を活用したサービスです。

VRというのは、360度カメラで撮影した遠隔の映像やデジタル空間をヘッドセット越しに視聴することで、現実空間のように疑似体験できる技術です。また、ARは、カメラやグラス(メガネ)越しに見える現実空間に、デジタルコンテンツを付加するという技術です。

VRやARなどを総称して「xR」と呼んだりしますが、xRは5G時代の幕開けを牽引する技術となるでしょう。

MR(複合現実)による新たな会議システムも


ソフトバンクが発表した「5G LAB」には、AKB48の劇場公演にVRを通じてどこからでも参加できる「VR SQUARE」や、スマホのカメラを通じてARで出現させたキャラクターと一緒に現実の人物を撮影して、SNSで共有する「AR SQUARE」といったサービスが含まれています。

NTTドコモが5G発表会で放映したコンセプトムービーでも、VRやARを活用したシーンが目白押しです。また、エンターテインメント体験の革新だけでなく、医師が手術する際にARグラスを装着し、患者の体に体内の映像をARで重ね合わせることで手術のナビゲーションをするといった、業務革新に活用されている点が特徴的です。

KDDIは(本稿執筆時点では)まだ5Gサービスを発表していませんが、5Gのトライアルとして、渋谷駅ハチ公前広場に可搬型の5G基地局を設置して、1960年代の渋谷駅前の風景をARで表示するという取り組みを行っています。また同社はMR(Mixed Reality、複合現実)に強い米国の「Spatial Systems inc.」と組んで、新たな会議システムも開発しています。

MRとは、AR同様に、現実空間にデジタルコンテンツを付加するものですが、MRグラスには多くのセンサーが組み込まれており、天井や床、壁、机や椅子など、現実空間の情報を反映した形でデジタルコンテンツを表示します。

MRの具体的なイメージとしては、会議室のホワイトボードにデジタル付箋紙を貼れば、その付箋紙はもうホワイトボードから離れません。他の人がMRグラス越しにホワイトボードの方を向けば、そのデジタル付箋紙が貼られているのを見ることができます。

ホワイトボードを含めた現実空間を、常時デジタル空間に再現し、そこにデジタル付箋紙を貼る、といえば、ARとの違いがつかめるかもしれません。

xRを活用したサービスは、現実空間をカメラなどのセンサーで取り込んだり、ヘッドセットに動画を送信したりと莫大な通信量が発生しますが、大容量通信の5Gならそれも実現可能になるというわけです。
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文=亀井卓也

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