FAプロダクツ代表取締役会長 天野眞也
スマートファクトリーとは、AI やIoT、ロボットといった技術で工場を「自律化」させ、最適な生産ができるシステムだ。具体的にはロボットで作業を自動化したり、AIによる分析・シミュレーションを通じて生産性を向上させたりして、人手不足の解決や製品の品質向上をもたらす。これらを通じ、環境変化に強い企業体質の構築を実現する。

これまでの新規工場建設は、実際に工場を建設してから生産ライン設備の不備をチェックする方法だったため、作業をやり直す工程(手戻り)が発生し、その度に設備の仕様変更や製造ラインの再構築に多くのコストがかかっていた。しかし、これからはデジタルシミュレーション技術を用いることで製造ライン構築の負担を大幅に軽減させることができる。

世の中に新商品を提供する時には、クオリティだけでなく市場への投入スピードも重要となる。最適な生産ラインをいかに早く構築できるかが、収益力の差にもつながる。デジタル技術によって既存のリアルの工場をスキャンしてデジタルモデル化し、シミュレーション技術を駆使してリアル工場を最適化できれば、これまでとは違うスピードで製造業を活性化させられる。これがスマートファクトリーを構築する最大の利点だ。

その理論と技術を持ち合わせたのが、FAプロダクツだ。同社は、共同事業体の「Team Cross FA(チームクロスエフエー)」を結成した、日本の製造業復活の旗振り役ともいえる存在だ。

FAプロダクツは、業界大手や各領域の知見を持つ企業の技術を結合させ、スマートファクトリーの技術を国内外に提供している。代表取締役会長の天野眞也は、「日本の製造業を再生させるためにスマートファクトリーが必要。しかも、今やらなければいけない」と熱く語る。

中国の製造業の急進ぶりを見るにつけ、日本はもう待ったなしの状態だ。中国には膨大な土地があり、労働者人口も多く、国策で思い切った投資をしている。一方で、日本はいずれも遅れを取っていることは否めない。

しかし、経済が好調なドイツ、アメリカ、中国を含め、スマートファクトリー化した製造業を確立させた国はまだ世界のどこにもない。だから今、日本がスマートファクトリーの事例や仕組みを構築できれば、日本の製造業も世界から再認識されるはずだと天野は考える。

天野は、日本でスマートファクトリーの技術を完成させ、東南アジアを始めとしたグローバルに展開し、マーケットを開拓する構想も描いている。「モノ」ではなく「ソリューション」、「モノ売り」から「コト売り」へと製造業の方向性を変えるきっかけにもなるスマートファクトリーだからこそ、外貨獲得のチャンスがあると見込んでいるのだ。

「世界を変える第4次産業革命の担い手は、GAFAではなく日本の製造業だ」と、天野は断言する。その意図は、そして勝算は。天野の日本再生に懸ける思いを1万字で余すことなくお伝えする。
FAプロダクツ代表取締役会長 天野眞也
スマートファクトリーとは、AIやIoT、ロボットといった技術で工場を「自律化」させ、最適な生産ができるシステムだ。具体的にはロボットで作業を自動化したり、 AIによる分析・シミュレーションを通じて生産性を向上させたりして、人手不足の解決や製品の品質向上をもたらす。これらを通じ、環境変化に強い企業体質の構築を実現する。

これまでの新規工場建設は、実際に工場を建設してから生産ライン設備の不備をチェックする方法だったため、作業をやり直す工程(手戻り)が発生し、その度に設備の仕様変更や製造ラインの再構築に多くのコストがかかっていた。しかし、これからはデジタルシミュレーション技術を用いることで製造ライン構築の負担を大幅に軽減させることができる。

世の中に新商品を提供する時には、クオリティだけでなく市場への投入スピードも重要となる。最適な生産ラインをいかに早く構築できるかが、収益力の差にもつながる。デジタル技術によって既存のリアルの工場をスキャンしてデジタルモデル化し、シミュレーション技術を駆使してリアル工場を最適化できれば、これまでとは違うスピードで製造業を活性化させられる。これがスマートファクトリーを構築する最大の利点だ。

その理論と技術を持ち合わせたのが、FAプロダクツだ。同社は、共同事業体の「Team Cross FA(チームクロスエフエー)」を結成した、日本の製造業復活の旗振り役ともいえる存在だ。

FAプロダクツは、業界大手や各領域の知見を持つ企業の技術を結合させ、スマートファクトリーの技術を国内外に提供している。代表取締役会長の天野眞也は、「日本の製造業を再生させるためにスマートファクトリーが必要。しかも、今やらなければいけない」と熱く語る。

中国の製造業の急進ぶりを見るにつけ、日本はもう待ったなしの状態だ。中国には膨大な土地があり、労働者人口も多く、国策で思い切った投資をしている。一方で、日本はいずれも遅れを取っていることは否めない。

しかし、経済が好調なドイツ、アメリカ、中国を含め、スマートファクトリー化した製造業を確立させた国はまだ世界のどこにもない。だから今、日本がスマートファクトリーの事例や仕組みを構築できれば、日本の製造業も世界から再認識されるはずだと天野は考える。

天野は、日本でスマートファクトリーの技術を完成させ、東南アジアを始めとしたグローバルに展開し、マーケットを開拓する構想も描いている。「モノ」ではなく「ソリューション」、「モノ売り」から「コト売り」へと製造業の方向性を変えるきっかけにもなるスマートファクトリーだからこそ、外貨獲得のチャンスがあると見込んでいるのだ。

「世界を変える第4次産業革命の担い手は、GAFAではなく日本の製造業だ」と、天野は断言する。その意図は、そして勝算は。天野の日本再生に懸ける思いを1万字で余すことなくお伝えする。
キーエンスで学んだ、「努力はかっこいい」
昔からバイクと車が好きだったので、モノづくりというか、製造業に対する憧れはもともと強かったんです。1991年に就職活動をしていた時、日産や本田技研などの大手を志望したのですが、ほとんど内定をいただけませんでした。

モータージャーナリストにも関心があったので、出版社にも応募しました。「日米自動車摩擦」にテーマにした大学の卒業論文をベースに、資料を作成して熱意を見せましたが、その出版社はそもそも新卒採用していなかったこともあり、残念ながら返信もなく全然だめでした。

最終的に内定をもらったのは、ある自動車メーカーと、工場の自動化を進めるファクトリーオートメーション(FA)機器メーカーのキーエンスでした。今でこそキーエンスはセンサや制御機器のトップ企業ですが、当時は知っている人はほとんどいませんでした。

どちらに行こうか悩んでいたところ、父親から「今がピークの業界には行かない方がいい。これから伸びるところの方がトップを狙えるぞ」と言われ、キーエンスに決めました。入社は1992年。当時の同期は200人ほどでした。
キーエンスでは営業として自動組み立て装置や検査装置など、自動化設備に取り付けるセンサやカメラを、エンジニア向けに提案していました。営業成績のランキングでは同期で1位に。また、2年目には全社で1位になることができました。

10人以上の部下を率いてマネジメントを経験したのが26歳の頃で、グループ責任者、営業所長を経て社長直轄の海外営業・重点顧客プロジェクト初代リーダーとなりました。年間売上が1兆円を超えるグローバル企業を相手に仕掛けた営業が、プロジェクト開始から3年目で大きな成功を得ることができたんです。

いい話ばかりに聞こえるかもしれませんが、キーエンスで愚直に仕事に取り組んで成果をあげられるようになるまでは、努力とは無縁の人生を歩んできました。学生時代もそれなりに勉強ができましたし、何でもそつなくこなして大きな挫折もなく生きてきたので、「自分は器用な人間なんだから、自分がその気になればなんでもできる」と本気で思っていましたね(笑)。だからキーエンスにいた頃も、努力なんかしなくても営業成績は簡単に上げられると信じて疑わなかったですし、生意気な言動もあったと思います。

でも、そんな中で、周りにいる先輩たちがひたすら努力を積み重ねて結果を出しているのを目の当たりにしました。なかでも当時の上司との出会いが僕の人生のターニングポイントになっています。許容力の高い方だったので、僕が生意気でとんがった言動をしていても、「お前がそう思うならそうなんだろう」と肯定してくれたんです。遅くまで残って指導してくれることもありましたし、見捨てないでいてくれました。そうすると、いつまでも半身の人生でいることが恥ずかしくなってきて、そこから努力することの大切さを覚えました。

キーエンスで学んだのは、まじめにきちんとやること。努力はかっこいいこと。営業として成果を出せたのは、それだけの努力をしたからだと自信を持って言えるようになりました。そして、モノづくりの面白さにも気づくことができました。
製造業の熱を取り戻すために、40歳で独立
40歳で独立を決意し、ファクトリーオートメーション(FA=工場の自動化)業界の会社を営業支援する会社を立ち上げました。かつて人気だった製造業の熱を再び取り戻したいという思いからきたものです。大きな目標は日本を元気にすること。勝手に日本を背負っています(笑)。

製造業に携わる技術者は、とにかく魅力的な人たちばかりです。例えば、僕が若い頃に出会ったおじさんは一日中、金属を綺麗に削っていました。「天野さん見てよ。超すごいでしょう、これ」って言っては、高精度に削り出した金属を嬉しそうに見せてくれるんですね。僕に毎回会うたび、工場の裏の自販機で缶コーヒーをおごってくれて、自分がいかにすごい技術で金属加工したのかを話してくれるんです。「ああ、この人は絶対に、仕事が終わったら家に帰って美味しいビールを飲んでいるんだろうな」って想像ができました。ただ一生懸命に自分の職務を全うする。そういった技術を磨き続けるエンジニアの方々が目の前にいたからこそ、僕も営業としてキーエンスで努力を続けることができたんです。

ただ、ご存知の通り、リーマンショックを経て日本の製造業はどんどん失速していきました。工場の生産設備能力以上の製品を生み出すことはできませんので自動化設備、FA技術は非常に重要です。その景色を直近で見ていて強く思ったのは、生産設備会社の大手下請け構造からの脱却の必要性です。いい設備を作ったとしても、それを顧客に正当に認めてもらう仕組みがない、ということでした。そこで、最初につくったFAナビという会社は、FAの領域で大手完成品メーカーと生産設備会社のインターネットでのマッチングサービスを始めたんです。

ただし、ちょっと時代が早すぎたようで、なかなか受け入れてもらえない時期が続きました。大手完成品メーカーと技術下請けという系列の中で取引が完結するのが、日本の製造業の大前提。その時は、「工場と生産設備会社で上手くマッチングできれば、新たなFA技術の導入により製造業は伸びる」と思っていたのですが、そうはうまくいきませんでしたね。

長い間、大手完成品メーカーを中心に仕事をしていると、技術も設備も働く人のマインドも、いい意味で大手のやり方に順応していきますので、全く取引のない会社からの仕事は受注しづらくなってしまう。つまり、環境の変化に対応しにくくなってしまうんです。

こうした日本独特の製造業の業界構造や文化があったので、マーケティング戦略・グロースハックといった外部コンサルティングのような立場で、メーカーの課題を分析して解決するという僕たちの仕事はなかなか理解されず、初年度は厳しい時期が続きました。ただ、2年目からトヨタ自動車をはじめとした大手企業とご一緒させてもらう機会に恵まれ、事業が少しずつ動き出しました。

現在の主な事業内容は、スマートファクトリー実現における総合支援です。具体的には、スマートファクトリー構築にあたっての全体最適の企画やプロデュースを行うほか、各種シミュレーションツールを活用してデジタル上にスマートファクトリーを再現するサービスを提供しています。また、設備の稼働状況を監視したり、故障の予知をしたりするシステムの提供、最適な生産投入計画をシミュレーターを導入して立案するサービス、製造業向けのロボットシステムなどスマートファクトリー化に必要な要素のパッケージ企画や販売なども手掛けています。
日本の製造業が、
今、変わらなければいけない理由
日本は「製造業の国」であると、今でも信じています。ただ、GDPの成長率を見るとずっと横ばい。なぜこうなってしまったのか。理由は簡単で、世界においてトップシェアを誇っていた「モノづくり」のシェアを、他国に取られてしまったからです。

例えば、エアコンや冷蔵庫、洗濯機などの白物家電は中国にシェアを奪われてしまいました。次に世界トップシェアを誇ったパソコンは中国に、薄型テレビは韓国にシェアを奪われてしまいました。このような状況にもかかわらず、日本のGDPの成長率が横ばいを維持できているのは、ひとえに自動車がトップシェアを堅持できているからに他なりません。しかし、今後電気自動車(EV)の時代に突入していくと、一層過酷な競争が待ち構えているでしょう。

なぜなら、少し乱暴な表現になるかもしれませんが、EVは「モーターとパソコンと蓄電池の組み合わせ」であり、そのいずれも日本が中国にシェアを奪われていると言えるからです。

つまり、中国はモーターとパソコン、蓄電池というEVの要素技術全てにイニシアチブを持っているのです。その上、中国は国家として念入りにEV戦略を立てているため、世界的にEV化が加速するほど競争は激化し、日本の自動車産業の苦戦が予想されるのです。

日本の製造業全体を俯瞰して見ると、これまでは価格以上の品質を提供し、コストパフォーマンスで勝負してきました。しかし、かつては格安で勝負してきた中国などの外国製品の品質が上がってきたことにより、コストパフォーマンスの面で大きな差がなくなり、日本のポジションを侵食しています。一方で、優れたブランド力による高価格製品で勝負するドイツのメルセデスやアメリカのAppleのようなプレミアム路線に移行するには高い壁があります。今、まさに日本は新たな外貨獲得産業を創出しなければならない状況となっています。
こうした業界構造の変化が押し寄せる中でも、日本全体の産業の図式は現在に至るまで大きく変わっていません。輸送機械や一般機械を売ることで、燃料と食糧を購入する。だから、日本は製造業が伸び悩んだら、経済のシステムが成り立たなくなるといっても大げさではありません。

それにもかかわらず、日本の製造業が国を支える基幹産業でありながら絶望的なくらい人気がない。ここが問題なのです。今はみんな「GAFAがいい」って言いますから(笑)。

なぜ、優秀な人材が日本の製造業に魅力を感じないのか。それは、製造業のルールが複雑でわかりにくいからだと僕は考えています。昔は合理的な戦略で整った仕組みで成長することができたから、成長の度に働く人たちも手応えも感じられて、楽しい業界でした。ですが、その仕組みを時代に合わせて変えることができずに今に至ります。

僕ら製造業が過去に作ったルールとしがらみを捨てて、自分たちが変わるために、スマートファクトリーという新しい提案をしていく必要があるんです。いつか変えようと先延ばしにしてきて行き詰まってしまった業界だからこそ、今なんです。もう5年、10年と先送りにするのではなく、今やらないといけないんですよ。

そして製造業が変わるためには、経営者の皆さん一人ひとりのマインドセットが一番重要だと考えています。まずは現状をよく理解すること。今、製造業のルールとなっているものは過去の成功体験がベースであり、それだけでは未来の製造業を思考できないことは現状が証明しています。

だから、これまでのような「実績が知りたい」とか「事例を教えてほしい」という思考は捨てるべきです。「これから先はこうなってほしい、こうありたい」というビジョンを持ち、そのビジョンを現実のものにするために今何をするべきなのか、今、何に投資することが本質的かといった議論を活性化させる。それが重要です。そうしていかなければいけないんです。その先に未来があるから。
こうした業界構造の変化が押し寄せる中でも、日本全体の産業の図式は現在に至るまで大きく変わっていません。輸送機械や一般機械を売ることで、燃料と食糧を購入する。だから、日本は製造業が伸び悩んだら、経済のシステムが成り立たなくなるといっても大げさではありません。

それにもかかわらず、日本の製造業が国を支える基幹産業でありながら絶望的なくらい人気がない。ここが問題なのです。今はみんな「GAFAがいい」って言いますから(笑)。

なぜ、優秀な人材が日本の製造業に魅力を感じないのか。それは、製造業のルールが複雑でわかりにくいからだと僕は考えています。昔は合理的な戦略で整った仕組みで成長することができたから、成長の度に働く人たちも手応えも感じられて、楽しい業界でした。ですが、その仕組みを時代に合わせて変えることができずに今に至ります。

僕ら製造業が過去に作ったルールとしがらみを捨てて、自分たちが変わるために、スマートファクトリーという新しい提案をしていく必要があるんです。いつか変えようと先延ばしにしてきて行き詰まってしまった業界だからこそ、今なんです。もう5年、10年と先送りにするのではなく、今やらないといけないんですよ。

そして製造業が変わるためには、経営者の皆さん一人ひとりのマインドセットが一番重要だと考えています。まずは現状をよく理解すること。今、製造業のルールとなっているものは過去の成功体験がベースであり、それだけでは未来の製造業を思考できないことは現状が証明しています。

だから、これまでのような「実績が知りたい」とか「事例を教えてほしい」という思考は捨てるべきです。「これから先はこうなってほしい、こうありたい」というビジョンを持ち、そのビジョンを現実のものにするために今何をするべきなのか、今、何に投資することが本質的かといった議論を活性化させる。それが重要です。そうしていかなければいけないんです。その先に未来があるから。
モノづくりに適した日本人の「強み」とは
製造業の成長を加速させる上で、日本には大きな強みがあると感じています。これまでの歴史で、日本がなぜ製造業でトップポジションをとれたのかを掘り下げてみると、その根拠が見えてきます。

日本メーカーが今の時代でも世界でトップシェアを取れている分野は、「自動車」「バイク」「大型複合機」などです。ここには共通点があります。部品点数が多いことなんです。

日本人は手先が器用だと言われますよね。たしかにモノづくりにそうした器用さは必要なのですが、世界にも同じレベルの人はたくさんいますから、日本人が優位に立っているというわけではありません。ではなぜ、部品点数の多い分野で勝っているのか。それは日本語という言語の特性に関係しているのではないかと思います。

日本語は、動詞が最後に来ます。つまり、相手の話を最後まで聞かないと、相手の行動や状態がわからない場合が多い。
視点を変えれば、最後まで聞かないとわからないからこそ、相手の目や表情、声色なども含めて相手の意図や気持ちを汲み取ろうとする日本人独特の「空気を読む力」「阿吽の呼吸」が醸成されていったのだと僕は考えています。

そしてこの非言語によるコミュニケーション、「空気を読む力」「阿吽の呼吸」がモノづくりにおいては非常に大切なものなんです。

製造業では、細かい作業手順書のようなものがすべて準備されているわけではないため、「この部品はこう組むんだよ」「このネジはこの順番で締めるんだよ」と口頭で伝えて進めることが大半です。こういった作業手順書のない阿吽のコミュニケーションが日本人は得意で、理解が早く、ミスも少なくこなすことができます。だから、部品点数が増えれば増えるほど、日本人の特性がモノづくりに生かされているのではないかと思うんです。
日本の強みがもう一つあります。それは産業用ロボット分野です。もともとはチェコスロバキア(当時)の小説家が初めて「ロボット」という言葉を使い、アメリカで誕生したのち、日本で社会実装したものです。今でこそ中国が伸びている産業用ロボットですが、今でも10大ロボットメーカーのうち半数は日本企業。日本はセンサの分野では世界一ですし、再生エネルギーの分野も高い技術水準を保っています。

そして、ロボットはスマートファクトリーの構成上、大事な技術の一つでもあります。

なぜ、日本がそうした技術を育てることができたか。僕は、日本人は技術を粘り強く使いこなすことができるからだと考えています。

日本人の仕事への向き合い方は、グローバルで見てもかなり特徴的です。企業経営をビジネスと割り切るのではなく、家業のようなものとして捉える。つまり、経営者の生き様が反映されやすいんです。

家業のようなものだから、経済合理性による判断で事業をピボットさせることも少ない。困難があったとしても「やらねばならない」という気持ちで愚直に向き合う人が多い。だから粘り強くロボットとも向き合うことができたんだと思います。

こうした「阿吽やカン・コツのような非言語化コミュニケーション力」と「粘り腰」が、日本の強みです。テクノロジーの進化を活用して、これらの強みをデジタル化し、さらにアップデートする仕組みを作れば、日本の製造業は世界で十分にトップを狙える。そして、今私たちがやっているスマートファクトリーがまさに世界のトップを目指す挑戦なのです。
モノづくりに適した日本人の「強み」とは
製造業の成長を加速させる上で、日本には大きな強みがあると感じています。これまでの歴史で、日本がなぜ製造業でトップポジションをとれたのかを掘り下げてみると、その根拠が見えてきます。

日本メーカーが今の時代でも世界でトップシェアを取れている分野は、「自動車」「バイク」「大型複合機」などです。ここには共通点があります。部品点数が多いことなんです。

日本人は手先が器用だと言われますよね。たしかにモノづくりにそうした器用さは必要なのですが、世界にも同じレベルの人はたくさんいますから、日本人が優位に立っているというわけではありません。ではなぜ、部品点数の多い分野で勝っているのか。それは日本語という言語の特性に関係しているのではないかと思います。

日本語は、動詞が最後に来ます。つまり、相手の話を最後まで聞かないと、相手の行動や状態がわからない場合が多い。

視点を変えれば、最後まで聞かないとわからないからこそ、相手の目や表情、声色なども含めて相手の意図や気持ちを汲み取ろうとする日本人独特の「空気を読む力」「阿吽の呼吸」が醸成されていったのだと僕は考えています。

そしてこの非言語によるコミュニケーション、「空気を読む力」「阿吽の呼吸」がモノづくりにおいては非常に大切なものなんです。

製造業では、細かい作業手順書のようなものがすべて準備されているわけではないため、「この部品はこう組むんだよ」「このネジはこの順番で締めるんだよ」と口頭で伝えて進めることが大半です。こういった作業手順書のない阿吽のコミュニケーションが日本人は得意で、理解が早く、ミスも少なくこなすことができます。だから、部品点数が増えれば増えるほど、日本人の特性がモノづくりに生かされているのではないかと思うんです。
日本の強みがもう一つあります。それは産業用ロボット分野です。もともとはチェコスロバキア(当時)の小説家が初めて「ロボット」という言葉を使い、アメリカで誕生したのち、日本で社会実装したものです。今でこそ中国が伸びている産業用ロボットですが、今でも10大ロボットメーカーのうち半数は日本企業。日本はセンサの分野では世界一ですし、再生エネルギーの分野も高い技術水準を保っています。

そして、ロボットはスマートファクトリーの構成上、大事な技術の一つでもあります。

なぜ、日本がそうした技術を育てることができたか。僕は、日本人は技術を粘り強く使いこなすことができるからだと考えています。

日本人の仕事への向き合い方は、グローバルで見てもかなり特徴的です。企業経営をビジネスと割り切るのではなく、家業のようなものとして捉える。つまり、経営者の生き様が反映されやすいんです。

家業のようなものだから、経済合理性による判断で事業をピボットさせることも少ない。困難があったとしても「やらねばならない」という気持ちで愚直に向き合う人が多い。だから粘り強くロボットとも向き合うことができたんだと思います。

こうした「阿吽やカン・コツのような非言語化コミュニケーション力」と「粘り腰」が、日本の強みです。テクノロジーの進化を活用して、これらの強みをデジタル化し、さらにアップデートする仕組みを作れば、日本の製造業は世界で十分にトップを狙える。そして、今私たちがやっているスマートファクトリーがまさに世界のトップを目指す挑戦なのです。
スマートファクトリーは製造業に必要不可欠な技術
スマートファクトリーを実現するための動きは加速しています。共同事業体「Team Cross FA(チームクロスエフエー)」もその一つです。FAプロダクツを含めた7社で幹事会社を構成しています。現在公式パートナーには、電通国際情報サービス(ISID)の他、日立システムズ、鹿島建設、ミツイワ、日研トータルソーシングが参画しています。

Team Cross FAは自動車・電機・食品・物流などあらゆる業界で、加工、組み立て、包装、検査、物流など多くの工程での知見を積んでいます。それらを最新の技術を活用して高次元で融合し「コネクテッドエンジニアリング」として世界に提供しています。

スマートファクトリー化を実現するためには、前提として、製造現場の自動化が肝となります。Team Cross FAでは、FA・ロボットSIerを主体とした幹事企業各社の連携によって、全体最適を踏まえた最適な工程設計を実施する。さらに、人・設備・製品のデータを収集し、デジタル分析をもとにデジタルシュミレーターが未来を予測することで、リアルな設備の自律的なコントロールを行い、無駄の無い自動化を実現します。

このように、デジタルとリアルが連動したスマートファクトリーは、製造業の人材不足を解決するだけではなく、生産性向上を図る上でも必要不可欠な技術なんです。

スマートファクトリーを実現するための動きは加速しています。共同事業体「Team Cross FA(チームクロスエフエー)」もその一つです。FAプロダクツを含めた7社で幹事会社を構成しています。現在公式パートナーには、電通国際情報サービス(ISID)の他、日立システムズ、鹿島建設、ミツイワ、日研トータルソーシングが参画しています。

Team Cross FAは自動車・電機・食品・物流などあらゆる業界で、加工、組み立て、包装、検査、物流など多くの工程での知見を積んでいます。それらを最新の技術を活用して高次元で融合し「コネクテッドエンジニアリング」として世界に提供しています。

スマートファクトリー化を実現するためには、前提として、製造現場の自動化が肝となります。Team Cross FAでは、FA・ロボットSIerを主体とした幹事企業各社の連携によって、全体最適を踏まえた最適な工程設計を実施する。さらに、人・設備・製品のデータを収集し、デジタル分析をもとにデジタルシュミレーターが未来を予測することで、リアルな設備の自律的なコントロールを行い、無駄の無い自動化を実現します。

このように、デジタルとリアルが連動したスマートファクトリーは、製造業の人材不足を解決するだけではなく、生産性向上を図る上でも必要不可欠な技術なんです。

スマートファクトリーが持つ限りない可能性
生産性向上だけではなく、スマートファクトリーが実現するメリットの一例として、新商品における市場投入のスピードアップが挙げられます。例えば、清涼飲料水メーカーがこれまで手掛けてこなかったアルコール飲料を新商品として投入するというケースで考えてみます。

まず、既存の清涼飲料水の工場ではじめてアルコール飲料のラインを作ると、どんな設備が必要か、どんな工夫が必要かという議論が発生します。そのやりとりに相当な時間が費やされてしまうのが今までのパターンでした。これが月間100万ケース売れるポテンシャルがある商品だとしたら、こうした議論をしている間に売り出しが遅れてしまいますから、もったいない話です。

しかし、スマートファクトリーであれば、工場のキャパシティと出荷の最大値・最小値をシミュレーションし、どこまでの受発注が来たら、どれだけの設備を入れておくべきかデジタルで分析し、迅速な判断を下すことができます。これは便利です。

あるいは、電気製品の例で考えてもらうとわかりやすいでしょうか。新商品の電気製品を開発するためには商品設計から入ります。そこで、ネジを20カ所締める設計にした場合、設計者と製造現場の担当者の目線は異なります。ネジを締める箇所が多いと、その分ネジを供給する仕組みが必要になります。ネジ供給には、部品を供給するパーツフィーダなどを活用するのと同時に、関連するボルトやワッシャーなどの供給も必要になります。

それを自動システムでやろうとすると、最大で1カ所300万円から500万円かかるケースもある。「これだと新たに設備を導入する必要があるから、ネジの数を10カ所に減らすよう再設計してくれないか」と製造現場側が考えるのは必然の流れです。でも、工程上、設計者はなかなか受け入れられる状況ではありません。製造業の各工程には、こうした齟齬があらゆるところで発生します。

こうした課題を解決するためにもスマートファクトリーは有効です。例えば、デジタルシミュレーションによって、ネジ締めの工程を1カ所設計に入れるたびに500万円アップ、1カ所減らすたびに500万円ダウンといったように、設計による効率性や投資対効果を可視化することも技術的には可能になります。

そうなると、製造業の各工程で生じる齟齬や無駄は激減するのではないでしょうか。スマートファクトリー時代の設計者は、デジタルによる設計・製造連携を通じて工程全体を俯瞰することが大切になってくるでしょう。
製造業は、モノを売る時代から技術そのものを売る時代へ
これまで述べた通り、スマートファクトリーは日本が強みを発揮できる領域です。しかし、どうやって実現していくかが課題です。日本は製造技術のレベルが高く、これまでオムツ、カップラーメン、パソコン、自動車とすべて製造工程を自動化できました。また、リアルな摺り合わせで培ってきたFA技術を持っています。あらゆる製造工程でリアルなFA技術をもっている国は世界のどこにもありません。

どんな産業の生産設備もデジタル化するには、一度、リアルな部分をデジタルにコピーして、そのデジタルを様相に合わせ、さらなるアイデアを加えた上でリアルに戻すことが必要です。このシステムを作るチャンスが日本にあります。今後、AI化・IoT化すればモノを売るのではなく技術やエコシステムを売る、言わば製造業を「コト売り」することができるんです。

スマートファクトリー技術のオープンプラットフォームを「日本式デジタルものづくり」として確立させ、可能なら国際規格化まで達成できれば、これこそが「新たなる外貨獲得産業」を創出することに他なりません。

世界を見渡しても、私たちが考えるスマートファクトリーを完成させた企業はまだ1社もない今だからこそ、一番乗りを目指すことにこだわりたい。第4次産業革命の担い手は、日本。日本の基幹産業である製造業が主導しなければならないんです。

その野望の第一歩として「スマートファクトリーとは何か?」という体験・体感ができるショールーム「スマートファクトリーコンダクターラボ(略称:スマラボ)」を作りました。そして次のステップとなるのが、南相馬市復興工業団地に立地予定第1号として進出する「ロボコム・アンド・エフエイコム南相馬工場」です。敷地内に世界初の見学可能なリアルスマートファクトリー加工組み立て工場や最新のロボット、AI、エネルギーシステムを組み合わせたショールームとグローバルエンジニア人材の研修センターも設ける計画です。まもなく地鎮祭(着工式)が行われ、2021年明けには施設が完成予定です。

また、隣接する福島ロボットテストフィールドにはすでに研究室があり、工場に入れる装置や加工機を製作しています。福島県南相馬の地で、実際に「これが僕たちの提唱するスマートファクトリーだ」といえる工場がついに具現化します。
モノづくりを面白くして、人気の職業にしたい
もう一つの野望として、僕はデジタルの力を使ってモノづくり自体を面白くしたいとも思っています。スマートファクトリーのデジタルシミュレーション技術にゲーム的な要素を入れたら、製造業を人気職種にすることができるんじゃないかと本気で考えています。

例えば「自分の設計が500万円のコスト削減になった」ということがリアルタイムで分かるだけではなくて、これをシミュレーションゲームをプレイしているかのようなユニークな世界観でエンジニアに通知させる。そうすると、最適解がもっと他にないかと夢中になって追求すると思うんですよ。

理想は、ユーザーが遊びながらタンパク質の研究へと協力できるパズルゲーム『Foldit(ホールディット)』のような世界観です。長年研究者が解明できなかったタンパク質の構造をユーザーがたった数週間で解明してしまうといったオープンイノベーションの事例がありますが、これこそがまさにゲーミフィケーションによる力なのです。これをモノづくりにもインストールしたいのです。
ゲーム中にキャラのレベルが上がったり敵を倒したりした時に楽しいと感じるのと同じように、自分の試行錯誤がどう成果に結びついたかが分かると、張り合いが生まれて、ゲームの楽しさにのめり込むうちに製造業の仕事の腕前が上がることだってあるはずです。

デジタル技術を使えばそんなに難しいことではありません。スポーツ競技やゲーム競技(eスポーツ)のように、努力と報酬を明確化させて自身やチームのパフォーマンスが上がることが楽しくなるルールを、製造業につくりたいんです。

未来を担う若者たちが「製造業で働きたい」と思ってもらえるようにするのも、これまでの製造業をつくってきた僕たちの使命だと思っています。

スマートファクトリーにすると、AIと同様にロボットが人間から仕事を奪うのではないかという議論が見られますが、それは全くの杞憂です。これまで人間は衣食住を得るために危険で嫌な仕事もたくさんしてきましたし、体を壊してしまうような過酷な仕事もまだまだ多い。そんな仕事、世界中誰もしたくないですよね。

人は人としてのクリエイティビティを発揮できる製造業のルールをつくって、若者が楽しみながら熱中してくれて、今までになかった新しい価値を生み出す。そんな連鎖をつくるきっかけに僕たちはなりたい。製造業で働く人が輝けば日本はまた輝くと信じています。
日本を勝手に背負い、この挑戦を誰よりも楽しむ
僕はこれまで、「3年で5,000億円ぐらいのスマートファクトリーの経済圏をつくりたい」と周囲に言い続けてきたのですが、これは実現可能だと思っています。日本の設備投資産業は約50兆円。僕が辞めた頃のキーエンスは、センサ類を中心とした電気・電子機器だけで2,500~2,600億円規模でした。今は5,000~6,000億円規模。自動装置における電気・電子機器の金額が占める割合はおおむね10%〜20%程度であり、センサ類はそのまたほんの一部にもかかわらずそれだけの売上規模があるのですから、僕らは5,000億円と言わず、1兆円を狙ってもいいと思っています。

スマートファクトリーを新しい外貨獲得産業として確立させて、自律化された日本の技術、生産技術(IoTやロボティクス)そのものをグローバルに販売していく。そして日本の経済成長を後押ししたい。

僕がこのような構想を大きく描けられるのは、人生を変える大きな出会いがあったからです。一番の出会いは、FAプロダクツの絶対的エンジニアリングパートナーである飯野英城。彼は様々な業界の製造現場のFA化を手掛ける株式会社オフィス エフエイ・コムの代表で、もともとは僕のキーエンス時代のお客様でした。

飯野が技術における未来を語り、そこに僕が空想に近いような発想で「こういうふうになると面白い」「こういうことは可能か」と話すと、飯野がまたそれを技術で形にするためのアイデアを出してくれる。飯野は寡黙で自らをアピールすることはあまりないので、その分僕がドリームプロデューサー兼パフォーマーとして前面に出る。不足を補完しあって相乗効果も生み出せる最高のパートナーなんです。それに、パートナーといってもビジネス上の関係だけではなくて、ただ単に好きだと思えて一緒にいたいと思える「友達」でもあるから超最高なんですよ(笑)。

また、FAプロダクツの社長を務めている貴田義和も、キーエンス時代の後輩です。キーエンスでかなりのポジションにいて、さらに出世するチャンスがあったにもかかわらず、誘ったらこちらに来てくれた。そんな熱い思いを秘めた人たちが周りにたくさんいるからこそ、僕はまた一歩前へと進んでいける。そしてチームでこの構想を成し遂げます。
何事も、「FUN to CHALLENGE」、挑戦を楽しむこと。使い古された言葉ではありますがそれを大切にしています。今の日本は、過去に製造業の大きな成功体験を持っているからこそ、その時のルールを壊し、新しい挑戦を楽しむことに臆病になってしまった気がします。

これから先、何をつかめるか分からないからこれまでのものを手放せない、ではなくて、ここで踏ん切りをつけなきゃいけない。過去の成功体験を手放して新しいものをつかみにいくこと。歴史は挑戦からしか生まれませんから。

「FUN to CHALLENGE」──この言葉を胸に、「日本のモノづくりを面白くする!」に突っ走ります!!
天野 眞也◎ 株式会社FAプロダクツ会長 株式会社キーエンスに新卒で入社後、組織横断型の社長直轄プロジェクトを率い、同社が売上数百億円から2,000億円を超える企業に成長するまで、第一線でけん引。自動車、食品、半導体など、あらゆる業界の生産現場を見てきた経験と、顧客と共に、海外を含む新工場プロジェクトを成功に導いてきた実績を基に、2010年起業。現在は株式会社FAプロダクツ会長、ロボコム株式会社社長、日本サポートシステム株式会社社長などを兼務。スマートファクトリー化案件を陣頭指揮する他、学生向け業界教育、エンジニア育成、ロボットSIerの認知度向上に尽力。競争力低下の原因となっている既存の仕組みを壊し、製造業を変革して「デジタルファクトリー」を核とした新しい輸出産業を創出するために、多くの公的機関や団体・企業と連携し、各種講演など精力的に活動している。





天野 眞也◎ 株式会社FAプロダクツ会長 株式会社キーエンスに新卒で入社後、組織横断型の社長直轄プロジェクトを率い、同社が売上数百億円から2,000億円を超える企業に成長するまで、第一線でけん引。自動車、食品、半導体など、あらゆる業界の生産現場を見てきた経験と、顧客と共に、海外を含む新工場プロジェクトを成功に導いてきた実績を基に、2010年起業。現在は株式会社FAプロダクツ会長、ロボコム株式会社社長、日本サポートシステム株式会社社長などを兼務。スマートファクトリー化案件を陣頭指揮する他、学生向け業界教育、エンジニア育成、ロボットSIerの認知度向上に尽力。競争力低下の原因となっている既存の仕組みを壊し、製造業を変革して「デジタルファクトリー」を核とした新しい輸出産業を創出するために、多くの公的機関や団体・企業と連携し、各種講演など精力的に活動している。





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photographs by Johney Terasaka/ design by Naoya Takata