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2020.03.31 16:00

世界シェア1%から60%に。 巨人を倒し、「危機からの脱出」

株式会社レニアス 取締役社長 赤尾太郎

1月、「SMALL GIANTS AWARD2019-2020」が開催された。同アワードで、アメリカン・エキスプレスが特別賞を贈ったのは広島のレニアスだ。すでに国内市場に幅広く受け入れられていることに満足せず、世界市場に積極的に進出する。同社にアメックスが見た、未来を切り開く企業とは?


GIANT KILLING ──。

1月に開催された「SMALL GIANTS AWARD2019-2020」の壇上のスクリーンに映し出されたのは、「巨人を倒せ」という刺激的な言葉だった。その前に立っていたのは広島県三原市からやって来たレニアスの社長、赤尾太郎だ。

「この10年を振り返ると、我々の売り上げが需要の縮小とともに年々右肩下がりになる、まさに逆風のなかにありました」

レニアスは主に建設機械や鉄道車両などに使われる「窓」をつくる会社だ。使用されるのはポリカーボネート。CDやスマートフォンなど、身近な産業でも幅広く使われている透明なプラスチック素材のひとつだ。ガラスと同等の透明度をもち、軽さはその半分、しかしながら強度はその250倍。1988年からポリカーボネートの製造を行うレニアスは、国内の建設機械市場で樹脂窓の9割を製造する。

しかし、外的環境の変化が同社を襲った──建機市場の低迷だ。

「海外に打って出ないと、生き残れない」

2010年、赤尾たちは決意した。徹底して海外の市場を調べ始め、飛び回る日々が始まった。

圧倒的で革新的な製品づくりへの挑戦

「きっかけは、ひとりのエンジニアとの出会いでした」と、赤尾は言う。海外市場を開拓すべく、レニアスが最初にアプローチしたカナダの会社に、その人はいた。たまたま担当になったエンジニアが日系アメリカ人で、偶然にもその妻はレニアスが本社を置く広島県三原市近辺の出身者だったという。縁が、チャンスを呼び寄せた。

「2010年当時、我々の会社には英語を話せる社員がほとんどいませんでした。小さな地方都市の中小企業ゆえ、グローバルな人材は簡単には集まらない。必死で英語を話せる人間をかき集め、プレゼン資料も英語で作り直しました。そうした中、たどたどしい英語でも理解に努めてくれたそのエンジニアとの交流がきっかけで、商社を介さない、海外における“自分たちの”人脈を作ることができたのです」

日系の人たちと親交を深め現場の事情を知るうちに、ある記事を見つける。

「運転手が作業中に飛んできた刃で死亡」。フィンランドで森林伐採の作業中、折れたチェーンソーの刃が運転席の窓を貫通し、操縦者が死亡したという記事だった。

「割り箸や住宅資材など、日本で使われている木材の多くは、欧米をはじめとした海外からの輸入に支えられています。森林を伐採する際、巨木が倒れてきたり、切れたチェーンソーが銃弾の倍のスピードで飛んできたりすることも少なくない。その時、操縦者を守る“防護盾”は、運転席を囲む窓1枚なんです」

調べていくと、死亡事故は多発していた。「人命を守る最強の樹脂窓をつくろう」。新たな目標が決まった。

ところが、その道のりは単純ではなかった。「音速の2倍のスピードでチェーンソーの刃が飛んでくるわけですから、樹脂製の窓なんて簡単に貫通します。強度には自信のあった私たちの製品でも、それは同じでした」と言う。建設機械や車両向けのサイズが大きく厚みがあり、強度の高いポリカーボネートの製造は、技術的に難易度が高い。表面の塗装や、張り合わせる素材を屈強なものにし、いかにして唯一無二の素材へと仕上げていくか──。

「納得の行く商品ができるまで、銃弾試験のために何度アメリカに渡ったかわかりません。そしてこの頃、私たちは大きな決断もしました。実は当時、市場を独占していたのは世界的な石油化学会社でした。 日本のいち地方企業がそんな巨大企業を倒して市場に参入するためには、多少の品質・性能の良さでは太刀打ちできません。圧倒的で革新的な製品を生み出すために50億円を投資して、世界最大の高性能射出成型機の開発に踏み切ったのです」

2014年、3年半の歳月をかけ、高さ5メートル・全長30メートルにも及ぶ巨大成型機が完成した。同時に、突き詰めてきた独自技術「スーパーハードコート」によって、表面強度を上げ、耐摩耗性、耐薬品性の向上にも成功する。

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世界最大の高性能射出成型機。現在は、さらなる飛躍に向けて新たな機械の導入も進めている

完成した製品は「RENCRAFT」と名付けられ、導入した現場では一度も人身事故が発生していないという。2010年には1%だった世界の林業市場のシェアも、2019年には60%にまで拡大し、同社の海外売り上げは全社売り上げの20%を占めるまでになった。

「アクセルを踏むと決めて投資した50億円という金額は、その当時の年商から見れば倍にも迫るものでした」

資金調達を行った前社長(現会長)の前田導も、あまりの金額に難色を示す金融機関がほとんどだったと、その当時を振り返る。一つ一つビジョンを実現させ、信用を勝ち取っていくほかに術はなかった。そうして年商60億円を達成した今、次なる拡大に向け、また新たな投資を予定するなど、攻めの姿勢は崩さない。

赤尾は「海外進出は必然だった」と続ける。国内の建設機械市場で圧倒的なシェアを持ちながらも、「国内市場はいずれ頭打ちになる。私たちのような中小企業が戦える、ニッチな市場を海外で開拓していかなければ」と、気を抜くことはしない。

「現在、軽量化ニーズに対応して国内自動車メーカーと開発を進めたり、住宅の窓への応用を模索するなど、ポリカーボネートの用途開発にも力を入れています。私たちは、市場の要求に応えながら、“あったらいいな”というものを付け加えて、それをスタンダードにする。その姿勢は変えず、変革を起こしていきたいですね」

同アワードで、特別賞「POWERFUL BACKING AWARD」を贈ったアメリカン・エキスプレスは、レニアスのような前進力を持ち、世界を切り開いていく中小企業を後押しし続けてきた。

「三原市から世界に通用する企業を」。レニアスの挑戦はまだ止まらない。 


赤尾太郎◎1982年、広島県生まれ。2004年にレニアス入社。同社の営業担当として、10年間にわたって世界中を飛び回ってきた。19年、現代表取締役会長・前田導氏より社長職を引き継ぎ、現職。今後は自社製品の強化とともに、働き方改革を進めていくことにも意欲的だ。

そう、ビジネスには、これがいる。
アメリカン・エキスプレス 

Promoted by アメリカン・エキスプレス / text by Toshihiko Masugi / photographs by Tadayuki Aritaka / edit by Miki Chigira

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