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古くからダイヤモンドの集積地として栄え、発達した研磨の技術を誇ったオランダには、ジュエリー史を語る上で欠くことのできない老舗がある。1854年に創業したダイヤモンドカッター、ロイヤル・アッシャー社だ。

 意外なことかもしれないが、ダイヤモンドは近代になるまで唯一の産出国、インドでわずかに採れるだけだった。それが1720年代にブラジルで、1860年代には南アフリカで大鉱脈が見つかり、ダイヤモンドジュエリーが世界にあまねく広がっていった。宝飾史におけるこの大転換期に活躍したのが、アムステルダムに本社を構えるロイヤル・アッシャー社なのだ。


世界最大のダイヤモンド原石を叩き割った男


1905年、南アフリカのプレミア鉱山で、3,106カラットものダイヤモンド原石が発見される。原石が鉱山の監督官たちのもとへ届けられると、あまりの大きさに監督官たちはそれがダイヤモンドであると信じず、あざ笑って窓の外へ放り投げたという。後に鉱山オーナーの名を取って「カリナン」と名づけられたこの原石は、史上最大のカラット数を誇り、記録は今なお破られていない。


3,106カラット(621.2g)のカリナンの原石を横と上から撮った写真。片手におさまりきらないほどの大きさだ。

その後、英国王室に奉献されたカリナンのカットを、一体誰に任せるのか。白羽の矢がたったのが、オランダのI.J. アッシャー社。現在のロイヤル・アッシャー社だ。ドーバー海峡を渡り、カレー港から陸路で運ばれた原石に、刃を入れる役目を負ったのは、アッシャー家のなかで最も腕前に優れた3代目、ジョセフ・アッシャーだった。

現代なら、原石のカットはハイテクを駆使したレーザー機器を使って行う。まず原石をスキャナで走査して3Dモデルにプロットし、最も効率のよいカットを計画し、グリーンレーザーで安全に切断する。だが、ジョセフ・アッシャーの時代は違った。原石の結晶構造に沿ってナイフを当て、ハンマーの一撃で叩き割るのだ。


主な9つの原石に割られた後のカリナン。研磨され、カリナンⅠ〜Ⅸまでのダイヤモンドになった。

1908年の2月、ジョセフは極度の緊張のなか、重い鋼のハンマーでナイフを打撃した。たちまちナイフが折れたため、再度千慮し、2本目のナイフを当て、ジョセフはカリナンを2つに割った。隣室には、ジョセフが卒倒した場合に備え、医師や看護師たちがつめかけていた。原石はさらに割られ、9個になった。それらを3人の研磨職人が1日14時間、神経をすり減らして働き続け、すべての研磨を終えたときには8カ月がたっていた。


左:セプター(王笏) 右:インペリアル・ステート・クラウン(大英帝国王冠)。ともに女王が公式行事で身につけるとき以外はロンドン塔で展示されている。

このダイヤモンドこそ、英国王室の至宝「カリナン」である。最大の530.2カラットの「カリナンⅠ」は君主の王権のシンボルであるセプター(王笏)に、2番目となる317.4カラットの「カリナンⅡ」はインペリアル・ステート・クラウンの正面に堂々とセットされている。ブローチにセットされた「カリナンⅢ」「カリナンⅣ」を祖母から受け継いだエリザベス女王は、これを「グラニーズ・チップス(おばあちゃんのかけら)」と呼んで愛用し、1958年のオランダ訪問の際、女王はブローチを身につけてロイヤル・アッシャー社に行幸したという。


1958年、エリザベス女王のオランダ公式訪問を記録した貴重な動画。女王の胸元にはグラニーズ・チップスが。

現在、ロイヤル・アッシャー社の本社は、アムステルダムのディアマントブールト(ダイヤモンド地区)と呼ばれる歴史的な街の一角にある。1980年には、当時のオランダ元首、ユリアナ女王から「ロイヤル」の称号を冠することを許され、社名をロイヤル・アッシャー社に変更。王室とのつながりは深く、現オランダ王妃であるマキシマ妃の指に輝く稀少なオレンジダイヤモンドも、ロイヤル・アッシャー社がカットした。オレンジはオランダのナショナルカラーであることから、ユリアナ女王が自ら購入しアレクサンダー国王が自らがデザインし、指輪に仕立ててマキシマ妃に贈ったのだという。

6代にわたるファミリービジネスが目指すもの


この春、ロイヤル・アッシャー社を長年率いてきた5代目、エドワード・アッシャーが引退。ワールド・ダイヤモンド・カウンシルの会長に就任するという。今後はエドワードの娘リタ・アッシャーと、息子マイク・アッシャーの姉弟が共同社長としてブランドの舵取りをしていくことになる。多くのジュエラーがメガブランドの傘下に入るなか、創業家によるファミリービジネスで、伝統の技術を守り続けているのだ。

「6代目として、リタは15年、私は21年ほど父のもとで働いてきました。ひとつの世代から次の世代へと移行する時期には、非常にデリケートなプロセスを踏むことになるため、慎重に準備を進めています」と語るのは、マイク・アッシャー氏。


アムステルダム中心部、アムステル川沿いに建つロイヤル・アッシャー社。


「父の時代から重点を置いてきたのは、グローバルなブランドの拡大です。今後もブランドの価値を高めるべく、グローバルなマーケティング戦略に力を入れるつもりです。また私たちはダイヤモンドカッターとしてだけでなく、ジュエラーとしてのポジショニングも固めていきます。6世代にわたるブランドの歴史とストーリー、そして私たちが社会的・倫理的責任を負ってビジネスを展開していることを、より多くの世界の人々に知っていただきたいですね」

社会的・倫理的責任とは、サステナビリティやCSR、ESGにおける重要なコードだ。2016年からロイヤル・アッシャー社は、責任ある宝飾のための協議会(Responsible Jewellery Council)に加盟し、その認証を得たダイヤモンド原石を取り扱う。テロや内戦の資金源になっていない原石、児童労働や強制労働によって採掘されていない原石を使用することは、ジュエラーたちにとっては今、最も重視すべき課題のひとつになっているからだ。


左からリタ・アッシャー、エドワード・アッシャー、マイク・アッシャー。

さらにマイク・アッシャー氏はこうも語る。「日本のお客さまは、高度なクラフツマンシップと、シンプルでオーセンティックなデザインを好まれる傾向にあります。そしてダイヤモンドのカットに対しては、強いこだわりを持っています。私たちは、完成度の高いカットにフォーカスしたダイヤモンドの専門ブランドですので、この点は強みです」

光学的に計算された新しいカットの創出


そう、ロイヤル・アッシャー社の誇りは、輝きの美しさを追求した独自のカット。「ロイヤル・アッシャー・カット」と「ロイヤル・アッシャー・ブリリアントカット」だ。ロイヤル・アッシャー・カットは、あのジョセフ・アッシャーが1902年に開発した「アッシャー・カット」を元にしながらさらに改良を加え、2000年にエドワード・アッシャーが完成させたカット。「カリナンⅠ世」に74のファセット(面)がほどこされた歴史的事実にちなみ、74面を採用している。


ロイヤル・アッシャー・カットのダイヤモンド(5.19カラット)をあしらったプラチナリング。1億500万円(税別)。

また、2019年に日本でヴェールを脱いだばかりの「ロイヤル・アッシャー・ブリリアントカット」は、一般的な58面のラウンドブリリアントカットに対し、やはり74面にファセットが増やされている。ダイヤモンドの光学的特性を計算し白い光、きらきらしたフラッシュのような反射がより強調され、伝統的なラウンドブリリアントカットとは、また違った輝きを放っている。ラウンドブリリアントカットはもちろんのこと、こうしたオリジナルカットの存在も、ロイヤル・アッシャー社の大きな魅力になっているのだ。


ロイヤル・アッシャー・ブリリアントカットを詳細に解説した動画。

カットにかける情熱のともし火を、166年もの間絶やすことのなかったロイヤル・アッシャー社。そのダイヤモンドの輝きは、一度は手に取って確かめてみる価値がある。目で見てはっきりとわかる真の輝きの豊かさを持つからこそ、クォリティコンシャスな日本人に、これまでずっと愛され続けてきたのである。


レーザー刻印でダイヤモンドをパーソナライズしよう


ロイヤル・アッシャーは、2000年に誕生したロイヤル・アッシャー・カットが20周年を迎えることを祝し、「ロイヤル・アッシャー・カット フェア」を順次開催。

一般的なラウンドカットにはないステップカットの個性と深遠な輝き、モダンなシェイプが魅力のロイヤル・アッシャー・カットを期間中に購入すると、ダイヤモンドのガードル部分にレーザーでイニシャルや日付などを刻印してくれる。ジュエリーに仕立てられていない、ルース(裸石)の状態での販売も行う。またカット開発者であるエドワード・アッシャー名誉会長の直筆メッセージとサイン付きレターもプレゼント。

会期:2020年5月23日(土)〜6月30日(火)
場所:
ロイヤル・アッシャー・ダイヤモンド 銀座本店
ロイヤル・アッシャー・ダイヤモンド 福岡天神店

会期:2020年7月4日(土)〜12月31日(木)
場所:
ロイヤル・アッシャー・ダイヤモンド 銀座本店
ロイヤル・アッシャー・ダイヤモンド 福岡天神店
全国正規販売店

問い合わせ:ロイヤル・アッシャー・オブ・ジャパン 
☎︎03-4346-3106
www.royalasscher-jp.com

Promoted by ロイヤル・アッシャー / text by Keiko Homma

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