あるデザイン工程を34年前倒し AIはより身近なところに

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ゴルフクラブメーカー大手、キャロウェイゴルフが1月に発表した「マーベリック・シリーズ」のドライバーが、米国や韓国を中心に爆破的な人気を呼んでいるという。興味深いのは、同ドライバーは人工知能(AI)がすべての設計を“担当”し、フェイス反発力、ボールスピード、飛距離の向上を実現した製品だということだ。

新しいドライバーを開発する際、デザインは5〜7回の工程で進められるのが一般的だそうだが、マーベリックはマシンラーニングを利用して1万5000回の工程を経てフェイス部分が開発されたという。

なお、1万5000回のデザイン検討は当初、6週間で処理することが計画されていたが、コンピューターの能力を強化し1週間に短縮したというエピソードもある。つまり、最適なフェイスデザインを探す工程数はそのままに、時間を大幅に短縮することに成功したというわけだ。

キャロウェイゴルフは、ドライバーだけでなく、フェアウェイウッド、アイアンなどクラブシリーズ全体にAI技術を採用している。同社の関係者は、「マーベリックドライバーはキャロウェイのAI技術と専門家の分析力の相互作用により誕生した力作」だと強調。AIを使わない既存の方法で制作した場合、「実現するのは34年後の2052年になるはずだった」とコメントしている。

なお最近では、70年の歴史を誇るイタリアの家具ブランド、カルテル(Kartell)が、AIによってデザインされた世界初の「AI椅子」を制作したというニュースも報じられた。

世界的なデザイナーであるフィリップ・スタルクと米ソフトウェア開発企業オートデスクがコラボレーションして制作したプロダクトだが、スタルク氏は、最小限の物質で身体を楽に休めることができる椅子という観点でAIに問いかけ、その答えを持ってデザインを生み出したという。



これまでAIといえば、工場やビジネスの現場、もしくは軍事など、どこか一般生活と遠いところにあるイメージが強かった。ただ昨今の動きをみていると、身近に使うモノや日常生活の中にも少しずつ浸透しているようにも思える。AIは、どのように我々の生活の質を高めてくれるのか。続報が楽しみである。

連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
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文=河 鐘基

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