ビジネス

2020.03.26

「ひとりのために」が、みんなのために


身近な人だから、想いがあるから


さまざまな事例を集めていくうちに、そこには多くの大企業が使うペルソナマーケティングにはない利点がたくさんあることに気づいた。

例えば、Prototype for Oneの場合、ターゲットである「ひとり」が実在し、しかもすぐ身近にいる。よって、「ターゲット」の行動や習慣などの観察がすぐできて、潜在するニーズやその人が抱えている課題も発見しやすい。こう困っているから、こういうふうに助けられるはずだ。そこから導き出される解決策には、自然とその人ならではのストーリーが内包される。

身近な人だから、想いがあるから、プロトタイプをつくるモチベーションだって上がる。また、そのひとりを相手に、瞬時にトライアル&エラーをしながら改善をくり返すことも可能だ。

Prototype for Oneは、新しいイノベーションへのアプローチになりえるのではないか。これを次の仮説とし、検証するためにある実験を行うことにした。それは、周りの人にPrototype for Oneを考えてもらうとどうなるのか、本当にここに書いたような利点を含んだアイデアが集まるのかという実験。やり方は次の通りである。

約50名の年齢も性別も専門性も異なる人に、自分の身近な誰かのためになるアイデアを自由に考えてもらう。ルールは2つ。1、かならず実在するひとりのためのアイデアであること。2、ドラえもんの道具のようにあると素晴らしいが、現在の技術では実現不可能なものは不可とする。

2週間後、100案を超える多様なPrototype for Oneが集まってきた。どんなアイデアが集まったのか。そこからどういうファインディングスが見えてきたのか。その全貌は、次回発表予定。乞うご期待。


キリーロバ・ナージャ◎電通Bチーム所属。Sound of Honda / Ayrton Senna 1989で国内外の賞を100以上受賞。2015年、コピーライターランキング世界1位。世界3大広告賞の審査員を務める。

鳥巣智行◎電通Bチーム所属。ソフトバンク「Pepper」の会話システムや、森永製菓「おかしな自由研究」の商品開発を行う。長崎原爆の記憶を継承する「Nagasaki Archive」の制作など平和もテーマに活動中。

文=キリーロバ・ナージャ、鳥巣智行 イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN No.16 2015年11月号(2015/09/25 発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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