ビジネス

2020.03.24

夢はヘアサロン業界のエアビー VCが支援する人毛エクステ企業

「メイブン」創業者 ディシャン・イミラ


そんなとき、オークランドでイミラの一家と一緒に暮らしていた姉代わりのヘアスタイリスト、レイナ・バトラーに、中国の毛髪業者を探してほしいと頼まれた。そこで12年に中国へ飛んだところ、人毛が素晴らしい輸入品であることに気づいたという。軽量でコンパクトであるため送料も安く、小売時の原価に対する利幅は最大で400%にもなったのだ。イミラは米国の税関統計を調べ、米国の市場は50億~60億ドルに相当すると試算した。

十分な起業資金を集めることができれば、ネットビジネスを立ち上げ、黒人のヘアスタイリストを販売代理店として勧誘し、彼らに売り上げの15~20%を取り分として渡せば、仕入れた毛髪を売ることができると考えたのだ。「モノを売って大金を稼ぐことができると思いました」とイミラは語る。「それに、黒人スタイリストのコミュニティにとっても大きなプラスになる仕事ができると思ったのです」


サンフランシスコの白人やアジア系の投資家たちは、黒人向け毛髪製品市場をなかなか理解してくれなかった。

昨年の終わり、イミラは投資家たちに新たなアプローチを売り込み、2300万ドルを調達した。メイブンは現在、ヘアエクステンションの販売をスタイリスト軍団に頼る代わりに、彼らから施術の予約を100ドルで買っている。そして、その予約をメイブンのヘアエクステンションを購入した顧客に無料で提供しているのだ。

このプログラムの開始から半年も経たないうちに、メイブンのサイトに掲載されている郵便番号別のスタイリスト一覧には、すでに3000人が名を連ねるようになった。

スタイリスト側からすると、自分の施術料金の割引を受け入れなければならないが、ほとんど労せずして新たな顧客を得られるという利点がある。メイブンでは、スタイリストからの施術予約の買い取り費用は損失となり、事業もいまだに黒字化していないが、ヘアエクステンション販売の利幅は手堅いため、それぞれの取引単位では利益が出ている。

イミラはさらなる高みを目指している。メイブンが販売する製品を、シャンプーやコンディショナー、黒人女性が夜に髪を保護するために着用するナイトキャップといった、利幅の大きい製品に拡大できると考えているのだ。また、あらゆるタイプの髪質や人種的背景を持つ人々の間でヘアエクステンションの利用が増えるなか、そういったあらゆる顧客を歓迎しているという。イミラは言う。

「エアビーアンドビーがホテルの最大手であるように、私はメイブンをヘアサロンの最大手にしたいのです」


ディシャン・イミラ◎2013年にメイブンを創業。「多くのアフリカ系アメリカ人の起業家にとって、1000万ドルの出資を求めるのは当たり前のことではありません」。イミラにとっては、黒人の妻を持つベン・ホロウィッツがメイブンの市場を理解していたことが助けになった。

文=スーザン・アダムス 写真=ティム・パネル 翻訳=木村理恵

この記事は 「Forbes JAPAN 3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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