ハワイへの渡航、異例の自粛要請。多様な新型コロナ対策、観光地の決断は

3月に初の感染者が確認されてから様々な対応策が講じられるハワイ (shutterstock)


このような政府の対応を受け、ハワイの住民の間では「しばらくは自宅で静かに過ごしておいた方が良いだろう」という気運が一気に高まった。2月下旬から始まっていたトイレットペーパーの品薄問題はさらに加速。トイレットペーパーやティッシュペーパー、キッチンペーパーの在庫は相変わらずないまま、米、パスタ、缶詰など保存期間が長めな食料品もスーパーの棚からどんどん消えていく事態に発展した。

ハワイのスーパーマーケット
ハワイのスーパーでは、缶詰・パスタなどの売場でほとんどの商品が消えている=筆者撮影

さらに3月21日には、ハワイに到着した旅行者や住民に対して、自宅またはホテルなどの滞在先で14日間の自己隔離を義務付けることを決定。違反者には5000ドル(約54万円)以下の罰金または1年以下の禁固もしくはその両方が科されることが発表された。

そして翌日には、ハワイへの渡航自粛要請決定からわずか5日で、カーク・コールドウェル ホノルル市長はオアフ島の住民に対し、4月30日まで不要な外出を控えるよう外出禁止令を発令。同じくマウイ島でも同様の措置が取られることが発表された。

普段は午後11時近くまで観光客でにぎわうワイキキでも、今後は暗く寂しい雰囲気に包まれるだろう。

日本の対応とは異なる、スピード感ある判断力


3月上旬にハワイで最初の感染者が確認されてからわずか2週間足らずで、ここまでハワイの街中が様変わりするとは、現地の住民も想定していなかったはずだ。おそらく日本であれば、感染者数が2桁程度であれば、新型コロナウイルスについて話題になったとしても、多くの人が出勤や外出、外食などいつもと同じような生活を送っていたのではないだろうか。

しかし、アメリカ本土でもっとも感染拡大が懸念されるカリフォルニア州では、今後8週間で人口の56%が感染するという予測もあり、約4000万人の全住民へ外出禁止令が出された。またイタリアやフランスのように、感染者が一気に急増するケースも起きているため、ハワイではそのような事態を阻止するべく、一見過大とも思える措置にいち早く踏み切ったのだと考えられる。

さらに州知事がハワイへの渡航自粛要請を発表したことも、観光業で成り立っているハワイにとって、大きな決断であったことは間違いない。観光客が激減すれば収入減や失業などが生じ、ハワイ全体の経済が打撃を受けることは避けられない。だが目先の利益だけを見るのではなく、州民の安全を長期的な視点で考えた上でのジャッジであったと想像できる。後手にまわったと批判される日本政府の対応では起こり得ないような、スピード感のある判断力と言えるだろう。

ハワイ州政府の対策により、市民の間に危機意識が高まったことも、ひとつの効果として上げられるかもしれない。これだけ世界中に新型コロナウイルスが蔓延しているいま、経済的な影響など少なからず犠牲を払わざるを得ないのは致し方ないものだろう。ハワイでのこの勇気ある決断が、新型コロナウイルスの収束を導くものであることを願いたい。

文=佐藤まきこ

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