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2020.03.24

DX化に勝機アリ──異色のギルド集団が描く、「日本の伝統工芸」復活のシナリオ

空の目のボードメンバー


着物業界初、女性服飾デザイナーを招聘


そのほか、空の目は伝統工芸のブランドを束ねる“プラットフォーム”として機能することで、職人がモノづくりに集中できる環境を提供することでブランドのインキュベーションも行っていく。世界に通用するブランドづくりのファースト・ペンギンとして、すでに岡野が代表を務めるOKANOはユニークな取り組みを始めている。

それが“着物業界初”となる女性服飾デザイナー・彩子を招聘し、サステナビリティを提唱する和洋服ブランド「SAICO」の展開だ。日本文化の象徴、職人の匠の技の集結である着物を彩子の類稀なコラージュデザインによって、ファッショナブルに現代のライフスタイルに合った洋服や小物として生まれ変わらせている。



「OKANOは着物だけでなく、ストール、ネクタイなどの制作も手がけていますが、今回ファッションを手がけることにしたのは、ファッションは拡散していくスピードが早いからです。グッチであればトム・フォード、ルイ・ヴィトンであればマーク・ジェイコブス、シャネルであればカール・ラガーフェルドといったように、欧州のラグジュアリーブランドもファッションを取り入れることで広がりを見せている。そうした背景もあり、ファッションに取り組むことにしました

デザイナーを誰にすべきか、話を進めていく中で藤原ヒロシなど、さまざまなデザイナーの名前があがってきました。また、これまでに桂由美や森英恵、川久保玲など着物の素材や着物の文化を利用したファッションアイテムは発表されていますが、どれも成功せず、定着していない。それは着物に軸を置いて着物を広げていく考えがないからです。その点、彩子は着物を愛していて、着物を生まれ変わらせようという考えを持っている。そこはOKANOと同じ思いを共有していると思ったので、コラボレーションを決めました。

将来的には『着物といえばOKANO』と言われるようなブランドになっていかなければなりません。着物を原点に置きつつ、そこから派生した商品をいくつも展開していき、ライフスタイル提案をしていけるようになればいい、と思っています」(岡野)

空の目が掲げる「1兆円企業」への道のり


経済産業省がクールジャパン機構というファンドを立ち上げ、日本の伝統工芸を世界に輩出しようと試みているものの、いまだに成功事例は見えてこない。岡野は「伝統工芸に身を置いた人から始まらなければ、絶対に上手くいかない」という。

「自分は経営側と職人側の気持ちがわかる特異に立ち位置にいたので、自分がリスクを取ってファーストペンギンにならなければ、すべてが理想論で終わってしまうと思ったんです。理想的な構想があっても行動と実行が伴って、事実にならなければ、どうしようもありません」(岡野)
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文=新國翔大 写真=小田駿一

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