「雇われない」働き方も選択肢に。生涯現役社会の未来像

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賃金労働だけではない高齢者の働き方

本格的な人口減少時代を迎え、高齢期の就業人口の確保は重要な課題だが、加齢が進む高齢期の働き方は現役時代と大きく異なる。これまでの厚生年金制度の適用事業所で適用条件を満たす働き方が望ましいとは限らない。


政府は「70歳まで働く機会の確保」に向けて、高年齢者雇用安定法改正案などを閣議決定した。従来の「定年の廃止や延長」、「継続雇用制度の導入」に加えて、「他の企業への再就職」や「フリーランス契約への資金提供」、「起業支援」、「社会貢献活動参加への資金提供」を打ち出している。

現在の年功要素の強い賃金体系では、単純な定年延長は企業の負担増につながるばかりだ。今後は同一企業での再雇用や定年延長ではなく、1人1人が定年後に自らの能力を発揮できるような、企業に「雇われない」働き方も重要な選択肢となるだろう。

そのためには、フリーランスという自由度の高い働き方への就労支援が求められる。高齢者をはじめ全世代のリカレント教育(生涯教育)を進め、「雇われない」働き方をする人たちの病気やケガを補償する労災保険の適用なども必要だ。

「雇われない」働き方の促進は、これまで子育てや介護、病気治療などにより時間的制約を抱えて労働市場に参入が難しかった人たちの就労をも可能にする。それは、労働市場の流動性を高め、「1億総活躍社会および全世代型社会保障」の実現に資するだろう。

成熟社会を迎えた今日、仕事の内容や働き方は多様になり、労働の概念も一層広がっている。労働の対価が、賃金だけではなく、生きがいや自己実現だったり、利他的な社会貢献だったりすることもある。

元来、「働く」とは極めて広い意味があり、自分の周囲の傍(はた)を楽(らく)にすることだという。仕事でお金を稼ぐことだけでなく、家庭での家事、育児、介護や地域活動など、さまざまな非賃金労働をも包含する概念なのだ。

高齢化が進み、無職の人が増えているが、それは単に社会的に従属して暮らす人が増えているということではない。定年後も、積極的に社会との関わりを保ち、地域活動やボランティア活動などの非賃金労働という就労により、社会に貢献している人も多い。

賃金労働だけが、社会を支える方法ではない。生涯現役社会の働き方とは、市場経済(Market Economy)における賃金労働に加えて、社会経済(Social Economy)における非賃金労働も含めた多様で柔軟な働き方を意味する。

働くことの目的や意義が多様化し、仕事と生活が渾然一体となった時代に、誰もが個々の能力を十分生かせる生涯現役社会づくりが求められているのだ。

連載:人生100年時代のライフマネジメント
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文=土堤内昭雄

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