この影響は広告やモバイル決済、クラウドコンピューティングまで、多岐な分野に及ぶだろう。「人々が屋内にこもりがちになったことにより、テンセントのゲーム事業は恩恵を受けた。しかし、WeChatペイなどのフィンテック部門には大きな打撃となった」と、香港のリサーチ企業Blue Lotus ResearchのAdam Xieは述べた。
テンセントは「クラッシュ・オブ・クラン」や「クラッシュ・ロワイヤル」で知られるフィンランドのゲーム会社、スーパーセルを傘下に持ち、2019年第4四半期のオンラインゲームの売上は、前年同期比で25%増だった。同社の四半期の売上の総額は152億ドル(約1.7兆円)で、利益も52%増の31億ドルに達していた。
その後もテンセントのゲーム部門の好調ぶりは続き、Sensor Towerのデータで、2月の同社のゲームアプリのダウンロード数は、前年比で10.4%のプラス。売上も11.8%の伸びだった。さらに、3月9日から15日までの期間のモバイルゲーム「PUBG」の世界の売上は、前週から26%も上昇していた。
しかし、テンセントは3月18日の決算発表の場で、ゲーム部門以外のカテゴリが厳しい見通しであることを明かした。店舗の閉鎖が相次ぐ中で、モバイル決済のWeChatペイの売上は大きく減少した。さらに、企業活動の抑制によりクラウドコンピューティング部門も減速に直面している。
一方で広告部門も今後は厳しい状況に直面しそうだ。WeChatのターゲティング広告は巨大なユーザーベースを誇るものの、景気減速によって、企業の広告出稿は大幅に低下する見通しだ。自動車からラグジュアリーアイテムまで、あらゆる分野で消費の落ち込みが予測され、唯一希望が持てるのはゲーム分野のみとなっている。
1月から3月のテンセントの広告部門の売上は、前年同期比で12%増にとどまる見通しだ。成長率は1年前の25%から大幅な下落となりそうだ。
一方で、リモートワークの拡大で成長が見込めるのが、昨年12月に立ち上げた業務ツールのTencent Meetingだ。このアプリのデイリーアクティブユーザー数は既に1000万人を超えている。
テンセントの戦略主任のJames Mitchellは、感染拡大により中国企業はデジタル化の重要性に気づき、Tencent Meetingは今後さらに利用人口を伸ばしていくと述べた。
「店舗の閉鎖が相つぐ中でも、エンタープライズ向けの業務ツールの利用は拡大している。この分野では引き続き力強い成長が見込める」とMitchellは続けた。