新型コロナ、預金保護強化で不安払拭を 金融危機に倣い

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突発的に発生した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が各国に急速に広がり、世界中が大騒ぎになっている。世界保健機関(WHO)はついにパンデミック(世界的大流行)を認め、米株式市場は今世紀に入り最悪の下落を記録。ドナルド・トランプ米大統領はウイルスと闘うために国家非常事態を宣言した。

米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利をほぼゼロに引き下げ、短期金融市場に1兆5000億ドル(約164兆円)の資金供給も行った。これらは経済的な観点から見て正しい方向の動きと言えるだろう。それはそれとして、米国には過去にも、現在の極めて難しい状況で参考にできそうな経験がある。

今回の事態は確かに多くの点で前例のないものだが、米国が2008年に金融危機に見舞われた時、米連邦預金保険公社(FDIC)は暫定流動性保証プログラム(TLGP)を実施している。これにより、参加する銀行の国内の無利子決済性預金、低金利のNOW(譲渡可能支払指示書)口座と付利弁護士信託口座(IOLTA)は09年12月31日まで全額保護された。

当時と同様に、今回も預金をめぐる国民の不安を和らげることは非常に重要だ。今回のパンデミックは前回からしばらく時間がたっており、影響は予想よりもはるかに大きなものになっている。国民が自分のお金について心配するのも無理はない。一時的であれ、追加の預金保護をすれば、信用危機の緩和につながるだろう。

COVID-19をめぐる多くの反応は、中には事実に即したものもあるだろうが、それ以外は人々の見方といっていいだろう。

米国の金融業界は金融危機後、銀行の健全性を高めるため資本要件を強化したドッド・フランク法に従ってきた。今では銀行は以前よりも自己資本が増強され、予期せぬ経済事象への対応力が向上している。預金者は、銀行の自己資本が手厚くなり、預金はFDICによって保証されているので、銀行に預けているお金は安全だと信用しているはずだ。

TLGPを短期間でもよいから復活させ、行動によって国民の不安を解消すれば、企業や消費者の信用はさらに高まり、米国民は性急な決定をしなくて済むだろう。今こそ行動を起こすべきだ。

編集=江戸伸禎

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