米連邦準備制度理事会(FRB)は政策金利をほぼゼロに引き下げ、短期金融市場に1兆5000億ドル(約164兆円)の資金供給も行った。これらは経済的な観点から見て正しい方向の動きと言えるだろう。それはそれとして、米国には過去にも、現在の極めて難しい状況で参考にできそうな経験がある。
今回の事態は確かに多くの点で前例のないものだが、米国が2008年に金融危機に見舞われた時、米連邦預金保険公社(FDIC)は暫定流動性保証プログラム(TLGP)を実施している。これにより、参加する銀行の国内の無利子決済性預金、低金利のNOW(譲渡可能支払指示書)口座と付利弁護士信託口座(IOLTA)は09年12月31日まで全額保護された。
当時と同様に、今回も預金をめぐる国民の不安を和らげることは非常に重要だ。今回のパンデミックは前回からしばらく時間がたっており、影響は予想よりもはるかに大きなものになっている。国民が自分のお金について心配するのも無理はない。一時的であれ、追加の預金保護をすれば、信用危機の緩和につながるだろう。
COVID-19をめぐる多くの反応は、中には事実に即したものもあるだろうが、それ以外は人々の見方といっていいだろう。
米国の金融業界は金融危機後、銀行の健全性を高めるため資本要件を強化したドッド・フランク法に従ってきた。今では銀行は以前よりも自己資本が増強され、予期せぬ経済事象への対応力が向上している。預金者は、銀行の自己資本が手厚くなり、預金はFDICによって保証されているので、銀行に預けているお金は安全だと信用しているはずだ。
TLGPを短期間でもよいから復活させ、行動によって国民の不安を解消すれば、企業や消費者の信用はさらに高まり、米国民は性急な決定をしなくて済むだろう。今こそ行動を起こすべきだ。