ビジネス

2020.03.24

誰かの成功事例には意味がない。イノベーションを自分の内側から見つける思考法

Westend61 / Getty Images


ところが、私の数多くのコンサルティング経験のなかで、共感、創造、表現と経てきた素晴らしいものが、この外部に発散させていく段階で、消滅するのをいくつも目の当たりにしてきました。

これまでのプロセスでは自分の感性と向きあい、理想の感覚を基に創りあげてきたにもかかわらず、最後の仕上げの過程になると、感性だけで大丈夫なのかといきなり不安になり、伝統的手法に回帰して、すべてをリセットしてしまうケースが少なくないのです。

具体的には、市場を分析し、細分化し、対象となる顧客グループを絞り込むという、市場や顧客中心の悪しき論理的マーケティングに安心を求めてしまうのです。これではせっかくの創造や表現のクリエイティビティをリセットし、市場や顧客が正しいと言い訳をし、アイデンティティや感性を正面から潰し、他の手段にすり替えてしまうことになってしまいます。

市場や顧客を分析しても、そこから新しいものは何も生み出されません。イノベーションは、市場や顧客の先を行くものです。時には、創りあげていく、育てあげるという考えが必要です。発散の段階では、アーティストと同様に、常識を崩す型破りな活動を貫き、現状の分析に留まることなく、常に前進し変化を続けることが重要になってきます。とにかく、自らの感覚や感性に自信を持ち、信じることが大切です。

そうして生み出した新しいものには、ロジックや説明が不可能なこともあります。この時、アウトプットされたもののクオリティに期待しないでください。期待するとコントロールしようとします。コントロールされると期待に応えようと型にはまります。そうすると、感性や感覚はあっという間に崩れていきます。お分かりかと思いますが、クリエイティブ思考は、モチベーションの維持と、パワーが必要になります。

これからの社会は、「感覚」がイノベーションの核になることを認めていかなくてはならないでしょう。最大限に想像力を働かせ、創造することに革新的となり、常に挑戦と冒険をしていくべきです。世界はすでにその方向に向かっています。

クリエイティブ思考は、過去を知るが過去にはない、基礎を知るが予測はできない、想像を超越したものをつくりあげていくための思考です。制限のない感覚や感性で自由に表現し、事例からの予測に縛られずポジティブで希望に満ち溢れている、未来への発想法です。

しかし、けっして特別なものではありません。それぞれ個の中にあるもの、つまりアイデンティティを引き出して表現し、創造すること。これは誰もができることなのです。

想像を超えた未来への思考に変えていきましょう。

未来を創造するのは、私たち人間です。


連載:エリックのInnovation and beyond

未来は、どのようになっていくのだろうか。
イノベーションを起こし、その先を創っていくのは、私たち人間だ。
未来は誰も知らない。想像の中にこそ未来がある。
音楽家でありビジネスコンサルタントであり大学教授の松永エリック・匡史が、独自の視点から世の中を斬り、未来へのヒントを導き出す。

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文=松永エリック・匡史 構成=細田知美

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