ビジネス

2020.03.23

【独白】「日本のアートマーケットが1兆円を超える」と断言できる理由

Shinwa Wise Holdings取締役会長の倉田陽一郎


 

投げ銭でアートを分散保有する


そうした中で、いま私が新たな可能性を感じているのが「分散型保有」です。オークションによって価値が決められることは、アートの価値付けのための重要な実態のひとつですが、アーティストがつくったアートをどうシェアし、分散化していくか。アートのコレクションはお金持ちのものだけではなく、どんな有名な作品でも誰もがコレクターになるチャンスがあってもいいと思います。所得や持っている資産にかかわらず、アートを愛するすべての人がアートをもつ機会があるべきであると思います。そのためには、アートのシェアリングという概念をより現実のものとして取り組むべきであると思います。

そのひとつの方法として、私が構想を練っているのがマスメディアを活用し、投げ銭によってアートを分散保有する、という仕組みです。最近、ネットの広告費がテレビ広告費を上回ったというニュースが出ていましたが、私は物事を伝播させていく上で、テレビは絶対に有効な手段だと思っています。

例えば、情熱大陸やカンブリア宮殿といったテレビ番組に、将来的に可能性のあるアーティストの生い立ち、アートのコンセプト、アートの意味、コレクターやアカデミックの人たちがどう捉えているかと、そのアーティストが創る作品の背後にあるすべてのストーリーを組み立てて放送してもらう。そしてそのアートに賛同する視聴者が1000円単位で自由に投げ銭できるようにする。そこで集まったお金を集計して出てきた金額の総額は、ある意味で、アートの価値と言えると思います。このアートの価値の形成のあり方は、オークション取引の進化系だと私は思います。



そして、投げ銭した人たちに、その投げ銭をした金額の比率に応じて、アートをシェアリングで保有できるようにする。さらに、テレビ局がプロの委員会を設置し、20年間のうちにその人が「売り時だ」と決定されたら、委員会の責任でアートを売却し、投げ銭の比率により、売却で得たお金は返金される。保有していることに意味がありアートを楽しむ価値だと思いますが、エグジットとして、売る際の仕組みも作っておかなければいけません。仮に売却したアートが有名な美術館に入れば、シェアをしていたコレクターは、あの美術館にあるアートは過去に自分がシェアして持っていたと言えることになります。

この新しいアートの価値付けのあり方を開発して、オークションの進化系として提案していきたい。そして、このシェアリングによる価値の形成のあり方は、日本人だけでなく、中国人のように、おおらかで面白いものを面白いと評価して楽しむことができる国民たちをも巻き込んでやっていきたいと思います。

「日本のアートマーケットに資金を流し込んで、代表的な日本人近代美術作家のマーケットメイクすること」と「新たな方法でアートの価値づけを行っていく」──この2つのアイデアを中心に、日本美術市場再生プロジェクトを組み立てていきます。もちろん日本の美術市場を再生するのは、一筋縄ではいかないでしょう。しかし、今、バブル崩壊から30年して、バブルを知らない若い世代が世代交代して新たな時代を作ろうとしている今、これまで右肩下がりの状態が続いてきた日本のアートマーケットを復活させる絶好のタイミングは、今だと思っています。

日本のアートを、日本発でアジアへと拡げていき、近い将来、必ずや日本のアートオークション市場を1兆円規模にして、アート取引市場全体では5兆円以上の市場の創造を目指したいと思います。

文=新國翔大 人物写真=山田大輔

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