ビジネス

2020.03.25 10:00

エアビーがホテル業界を「破壊」するまで。新しい「当たり前」を作る組織が勝つ

石井節子
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さらに注目すべきは、SNSの爆発的普及だ。

民泊サービスを提供するホストたちにとって、大きな懸念の一つは、宿泊するゲストたち個人の与信情報だ。知らない人を自分の不動産に寝泊まりさせることになる以上、ゲストの信用を保証する仕組みは不可欠である。そんななか、爆発的に普及したフェイスブックはゲストの与信情報インフラとして機能することになった。SNSの登場がなければ、Airbnbのようなビジネスがここまでの急成長を遂げることはなかっただろう。

こうしたいくつかの「時代の追い風」による後押しも重なった結果、Airbnbは顧客が求める性能ニーズを満たすようになり、「いつでも叩き潰してやる」と余裕を見せていた従来型ホテルから、次々と顧客を奪っていった。




しかもAirbnbは成長スピードにおいても、従来型ホテルを上回っていた。ホテル業を拡張していくためには、デベロッパーに相談して土地を仕入れ、建物を建てて、スタッフを教育する……といった長大なプロセスがどうしても必要になる。

他方、Airbnbの場合は、空き部屋を有効活用したいホストたちのほうから次々と集まってきてくれるので、提供できる部屋数がどんどん増えていく。

こうしてある時点でついに、「破壊的イノベーションがもたらす効能」が「持続的イノベーションの効能」を上回ることになったわけである。

従来型のホテルは、いま目の前にある市場をいかに満足させるかを考えて、そのなかで持続的イノベーションを目指していた。彼らの主眼は「プロダクト・カレント・マーケット・フィット(PCMF)」にあったわけだ。

これと対比的に言えば、Airbnbが満足させようとしていたのは、将来生まれてくるマーケットであり、「プロダクト・フューチャー・マーケット・フィット(PFMF:Product Future Market Fit)」を通じて破壊的イノベーションを引き起こしたのである。

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