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2020.03.25 10:00

エアビーがホテル業界を「破壊」するまで。新しい「当たり前」を作る組織が勝つ

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外部環境が激しく変わり、プロダクトやサービスのライフサイクルがどんどん短命になる現代では、より早く、より多く新たなビジネスを生み出す組織・人材が必要とされる。イノベーションとは何か? そして継続的に新規事業を創出する企業に共通する「科学」とは。

※本稿は、田所雅之『御社の新規事業はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)の一部を再編集したものです。


破壊的イノベーターとしてのAirbnb


スタートアップにしろ、大企業にしろ、提供する商品・サービスが市場に受け入れられなければならない。そんなことは当たり前だと思うかもしれないが、起業とか新規事業の創出となると、つい「いかに高機能なドリルをつくるか」にとらわれてしまうプレイヤーは少なくない。

顧客が求めているのは「ドリル」ではなく、それによって開けられる「穴」である。それを忘れることなく、顧客のインサイトをすくい上げられるかどうかが、ビジネスの成否を決めている。

自社が提供する商品・サービスがマーケットに受け入れられる状態──それがプロダクト・マーケット・フィット(PMF:Product Market Fit)である。

では、このPMFという観点から見た場合、持続的イノベーションと破壊的イノベーションとのあいだには、どのような違いがあるだろうか?

これを見ていくために、ホテル業界に破壊的イノベーションをもたらした「Airbnb(エアビーアンドビー)」の事例を取り上げることにしよう。

ご存知の方も多いと思うが、Airbnbは部屋を貸したい人(ホスト)と部屋を借りたい人(ゲスト)とをマッチングするサービスである。

ホストの多くは従来型の宿泊事業者というよりは、所有する空き部屋を有効活用したい一般人である。使っていない部屋がある人や、家の維持費が高くて困っている人は、それらを他人に貸し出してお金を稼ぐことができる。またゲストのほうは、通常のホテルなどに比べると安い宿泊先を探すことができる。

自ら対外的に「ホテル業界を破壊した」とアピールすることはなく、単なる「民泊サービス」として紹介されることも多いものの、Airbnbはまぎれもない「破壊的イノベーター」の典型である。

同社が設立されたのは2008年だが、創業10年足らずで時価総額は3兆円を突破し、業界最大手であるヒルトン、マリオットなどの伝統的なホテル事業者を追い越すまでに成長してしまった。

従来型ホテルの場合、彼らの時価総額の根拠というのは、基本的に建物と土地、そして、彼らが築いてきたブランドである。

他方、Airbnbはそうした資産を所有していない。彼らの時価総額の根拠は、このサービスが持つ圧倒的なユーザーエクスペリエンス、ホストとゲストに関する膨大な量のデータ、サービス認知度/ブランドである。それで3兆円以上の市場価値で評価されているのは、驚くべき事実である。
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