現役看護師の僧侶が語る、「死の3カ月前」頃から起こる3つのこと

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死の間際、人の体と心はどう変わるのか? 現役看護師の僧侶が、平穏で幸福な死を迎える方法と、残される家族に必要な心の準備を記した光文社新書『死にゆく人の心に寄りそう』(玉置妙憂著)が刊行になりました。刊行を記念して、一部を公開します。玉置さんが語る「医療と宗教の間のケア」とはどのようなものなのでしょうか?

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1. 外界に興味がなくなり、内に興味が向く


まず初めに、死にゆくとき、人の体と心にどのような変化が起こるかを見ていきましょう。

人には個人差がありますから、必ずしもこの通りになるわけではありませんが、だいたいの流れを知っておけば、いざというとき慌てずに済みます。

死の予兆は、おおむね3カ月前から現れ始めます。

多くの場合初めに現れるのは、外に向かうベクトルがなくなって、内向きになることです。人に会ったり出かけたりしなくなり、世の中で起こっていることにも興味がなくなって、テレビや新聞も見たくなくなります。特にこれといって体がつらいわけではありません。考えてみれば、死に向かうとき外界に興味がなくなるのは、当然のことではないでしょうか。


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私たちが、たとえば天気予報やニュースを見て外界の情報を収集するのは、生きるために外に出かけて行くからです。じきに着地しますというときには、もう出かけて行く必要がありませんから、外の情報を収集する必要がなくなります。雨が降ろうが雪が降ろうが、外で何が起こっていようが、関係ないのです。

その代わり自分の内側に興味が向いて、これまでにどういうことをしてきたか、それでどうなったか、などといったことをしきりに話したりします。端からは、「また昔の自慢話をしている」と見えることもあるのですが、本人にしてみれば、昔のことを話しながら一生懸命自分自身の人生の整理をしているのです。

出かけもしないで昔話ばかりしているのですから、家族はとても心配になります。それで、「家にばかりいるとボケちゃうわよ。たまには外に出てきたら?」などと言いますが、本人は出かけようとしません。

この時期はいわば、家族が見ている世界と死にゆく人が見ている世界が、だんだん離れていく時期なのです。

2. 食欲が落ちて食べなくなる、やせる


しばらくすると、今度は食欲がだんだんと落ちてきます。

私たちがものを食べるのは、肉体を維持するためです。もうじき死ぬということは、この肉体を脱ぎ捨てるということですから、肉体を維持するための栄養は、それほど積極的に摂らなくてもよくなるのです。したがって、ごく当たり前のこととして、食が細くなります。そして、やせていきます。
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