ロータスを救った名車「エリーゼ」 ドライビングとアナログへのこだわり

ロータス・エリーゼ

ロータス・エリーゼ。今どきなんてエレガントで高級感あふれるネーミングだろう。しかし、ロータス社がどんなメーカーか知っている人はどれぐらいいるだろう?

格好良いスポーツカー・メーカーであること、1960年代から1970年代にかけて7回F1選手権を獲得したこと、2017年に中国のジーリー社に買収されたこと……それとも、トヨタ製のエンジンを搭載しているというイメージを持っているだろうか?

おそらく、多くの読者は「乗ったことがないけど、あの英国のスポーツカーのメーカーね」という認識ではないかと思う。同社は1948年、英国のノーフォークで、伝説的なデザイナー兼F1ドライバーのコリン・チャップマンによって創立された自動車メーカーだ。

カルチャー的な視点でいえば、日本の「サーキットの狼」という漫画シリーズに登場した名車「ヨーロッパ」、マツダ・ロードスターのインスピレーションになった「エラン」、また、映画「007 私を愛したスパイ」に出た「エスプリ」を思い出す人も多いことだろう。

原点回帰の「エリーゼ」に試乗


こうして書くとラインアップが多いように感じるが、実は、72年の歴史で同社の車種はそれほど多くない。

創業当初、チャップマン氏はライトウエイト哲学を掲げていたが、70年代に入ると高級化に走り車重が重くなっていき、市場も少しずつ離れていった。さらに、1989年に名車エランからデザインのヒントを受けたマツダ・ロードスターが登場して大ヒットになった時は、ロータスは市場に忘れかけられ、最大の危機を迎えた。

しかし、1993年にイタリアのロマノ・アルティオーリがロータスの所有権を買い、90年代半ばには、ロータスを救う「エリーゼ」が生まれた。

1996年に発売された新型エリーゼはチャップマン氏が主張した軽量ボディのルーツに回帰し、非常にプロポーションの綺麗な外観ができた。ヘッドライトの下に大きな開口部・エアインテークが施され、そこに空気を入れ込むことによって、すぐ後ろのブレーキを冷やす効果がある。また、サイドに設置された開口部からも空気をミッドシップのエンジンルームに送り込み、エンジンなどを冷やす。

僕は今回、そのエリーゼの走りを確かめるべく、今話題の「エリーゼ・スポート220」という特別仕様車に乗ってみることにした。なんと車重が878kgしかないこのクルマのスペックは目が点になるほど特別なので、ここでもう少し触れて見よう。



スポート220は、トヨタ製の4気筒1.8Lスーパーチャージャー付きのエンジンが搭載されており、6速M/Tと組み合わさっている。もちろん、「220」というネーミングは、最高出力の220psを示している。ちなみに、ポルシェなどの多くのライバルと違い、スポート220は6速M/Tのみで、パドルシフト付きのオートマチックの選択がないのは、今の時代には非常に珍しいことだ。
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文・写真=ピーター・ライオン

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