2010年代に自動車業界を刺激したベスト7台

アルピーヌA110

令和初の正月を迎え、2020年代が始まろうとしている。そこで10年代(つまり10~19年の10年間)、自動車業界に最も影響を与えたクルマ「ベスト7台」を探ってみようと思う。

どのように選択したかというと、アメリカの有力誌「カー&ドライバー」と「モーター・トレンド」などを参照しながら、僕の独断と偏見で選ばせてもらった。つまり、同誌に同意する部分もあるけど、意見が異なるところもある。

まず、誰もが同意するのは、この10年が「SUV」と「EV(電気自動車)」の時代だったということ。セダンやクーぺの人気が下降する中、市場のニーズに合わせるため、各サイズ、各価格帯のSUVが次々と登場した。また、10年に手頃なEVが初の大量生産で誕生すると、その2年後にはカッコいいうえに超速い、画期的なEVも現れ、それまでのEVに対する認識を一変させた。


日産・リーフ

まずは1台目。EVの人気を最初に広めたのは、10年に登場した「日産リーフ」だった。19年3月までの10年で全世界での販売台数が40万台を突破して、最も売れたEVになった。この車両で初めて一般人が手頃な価格で気楽にEVに乗れるようになった。

2020年代、SUVとEVが「主流」に?


しかし、11年の欧州最優秀車賞(欧州COTY)やワールドCOTY賞を受賞した初代リーフの航続距離はたった117km(米EPA局の数値)だったから、それが唯一のネックだった。同車の最新仕様では、その数字が364kmに達したけどね。


テスラ・モデルS

続いて2台目を紹介しよう。2010年代に最も影響したクルマは2年後の12年に登場した「テスラ・モデルS」だ。この画期的なクルマはそれまでのEVに対する考え方をいきなり覆した。初代モデルSは最初から400km以上の航続距離を記録しただけではなく、ルックスも流れるようなシルエットで美しかったし、加速性と走りは異次元のものだった。

しかも、室内は高級感がありながら、1枚の大型タッチスクリーンだけのインパネ(計器類)はスパルタンな空間。運転席に乗り込むと、2025年の近未来にタイムスリップしたような気分だった。オートパイロットという準自動運転機能もついていたし、アップデートはWi-FiでダウンロードできるモデルSは、かなりの衝撃を市場に与えた車両だったといえる。

3台目は、19年末に乗ったもう1台のEV「ポルシェ・タイカン」だ。ここ2年の間、ジャガー・I-PACE、アウディ・e-tron、メルセデス・EQC、テスラ・モデル3などの次世代EVが登場しているけれど、タイカンはそれらの走りと作りを完全に上回っていると思う。

タイカンの加速、走り、スリル度は業界の最高レベルに達しているだけでなく、デュアルモーター、バッテリー、インバーターなどの基本ハードウェアは今までに考えられなかったシャシーの低い位置に設定されている。それだけの重いメカニズムをあれだけ低くポジショニングすると、クルマはまったくロールしないし、走りがダントツに向上する。タイカンは間違いなく業界を良い方向に影響する1台だ。
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文=ピーター・ライオン

この記事は 「Forbes JAPAN 1月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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