この春は近場の「いいホテル」で舌鼓。ステイケーションのすすめ

アマン東京「アルヴァ」にて。旬のメバルと筍のグリル、松の実とアンチョビのオリジナルソース。

東京の桜はすでに開花したものの、世界に広がる新型コロナウイルスの影響で、この時期の楽しみである花見宴会も自粛要請が出るなど、いつもと少し違う桜の季節を迎えている。

それでも、季節を楽しむのはいつの世も大切な日本の文化。旅行は中止せざるを得なくても、東京には身近にも非日常を楽しめる場所があある。近場のラグジュアリーホテルだ。

そこで今回は、アクセス至便な東京駅周辺の3つのホテルをピックアップ。いつもの行動範囲の中でふと立ち寄れる空間で、“旬の食材”を使った食事に季節を感じてみてはいかがだろう。

アマン東京


33階のロビーに障子をイメージした吹き抜けが出迎える「アマン東京」を表現するには、開放感、と言う言葉がぴったりとくるだろう。

客室も天井が高く、一番カジュアルなデラックスルームでも71平米の広さを誇り、天気が良ければ、外苑の森の先、彼方富士山まで望める絶景が広がる。東京であって東京でないような、空に開けたホテル。そんな空間だ。
 
デザインは世界各地のアマンを手がけ、数々の名建築で知られるケリー・ヒルによるもので、和のアクセントを効かせた高揚感を感じる明るさは、そのまま、平木正和料理長率いるメインダイニング「アルヴァ」から受ける印象にもつながる。



ベネチアの有名ホテル「ザ・バウアー」で総料理長まで務めた平木シェフは、食材の良さをそのままに伝えるイタリア料理の原点を追い求め、月に2度は日本各地に飛び、農家を訪問する。気になる農場を見つけた時には「アポなし突撃訪問」になることもあり、アマン東京の総料理長の肩書きの名刺を差し出すと、驚かれることも少なくない。

「日本ではなかなか良いカタクチイワシが安定して手に入らなくて。アンチョビを作りたいと思っているんだけど、自分で漁に出るしかないのかなあ」と、冗談混じりに口にする。数年後には「本当に漁に行っちゃいましたよ」と、手製のアンチョビが出て来るかも知れない……そう思わせるほどに、素材と向き合い、一から手作りするスタイルは徹底している。

「このウド、東京で取れるんです」と、泥だらけの地下にある栽培施設に入っていった時の写真を見せてもらった。「赤土の粘土質だから、繊細な風味とみずみずしさが出る」と、その素材の味わいの背景にも思いをはせる。


ウドを使ったサラダ仕立ての一品。塩と砂糖でマリネした後、オリーブ酢に漬けた鰆、カプリーノチーズとピンクペッパーを合わせて。
 

ローマで春になると食べる野菜の煮込み、「ヴィニャローラ」をモダンにアレンジ。旬の新玉ねぎやグリーンピースの柔らかな甘みと豚肉の塩漬け、グアンチャーレのこっくりとした脂身の旨味を生かし、蒸した金目鯛を乗せて。
 
ちなみに、ルームサービスでも、アルヴァの料理が楽しめるのは特筆すべき点だろう。また、あまり知られていないが、30メートルのプールが自慢のスパも丸一日楽しめる、ランチ付きの日帰りウェルネスパッケージもある。
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文=仲山今日子

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