「石油価格の崩壊」をトランプが切り抜けられる3つの理由

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3月に入ってから、2つの市場関連のサプライズが米大統領選に割って入った。これらのサプライズは、それぞれ異なる、だが互いに結びついたものだった。

ひとつは、高値だった株式市場の急降下で、これはおもに新型コロナウイルスに対する不安が原因だ。もうひとつのサプライズは、石油価格のさらに急激な下落だ。3月8日日曜夜のある時点では、複数の国際石油取引所の石油価格が、30%を超える下げ幅を記録した。こちらも新型コロナウイルスに対する不安が一因だが、主要産油国間の意見の不一致にも起因している。

アメリカ政治に関する最大の疑問は、こうした市場の急激な動揺が大統領選にどう影響するのか、という点だ。おもにエネルギーとエネルギー市場の問題を解説しているこのコラムでは、石油価格の下落に絞って話を進めたい。

石油価格がこれほど低くなると(アメリカの指標であるWTI原油価格で30ドル台前半の範囲)、フラッキング(水圧破砕法)によるアメリカのシェールオイル採掘の利益が出なくなる。この価格水準が続けば、一部の石油会社が、さらなる金策や事業売却、破産申請に追い込まれるのは時間の問題だ。レイオフもあるだろう。現在のところ記録的な高水準にあるアメリカの石油生産量は減少するだろう。

こうした状況は、ドナルド・トランプ大統領の再選チャンスという点では、ひどく都合の悪いものに見える。だが、トランプにとってはそれほど悪くないかもしれない。以下では、その3つの理由を挙げてみよう。

1. 石油業界が支持できる候補がほかにいるだろうか? 石油会社のCEOから溶接工、金融関係者に至るまで、アメリカの堅固な石油・天然ガス業界で生計を立てている人には、ジョー・バイデン前副大統領やバーニー・サンダース上院議員よりもトランプを支持する理由がある。

バイデンとサンダースは、どちらも「グリーン・ニューディール」を支持している。この政策が実現すれば、アメリカの石油・ガス業界は壊滅的な打撃を受けるだろう。それどころかサンダースは、石油会社幹部の告訴を求めている(何の罪状で告訴するのかは定かではない)。それに比べてトランプは、規制を緩和し、掘削を促進してきた。

新型コロナウイルスと、アジアにおける石油価格戦争により、数か月のあいだ厳しい時期が続くかもしれない。それでも石油業界には、みずからの存在そのものに反対する候補者を支持する理由はまったくない。
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翻訳=梅田智世/ガリレオ

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