株価の回復は長期戦に
株式市場に関わる者すべてにとって、この1週間ほどは長く感じられたかもしれない。だが、下げ相場が短期間で収束する例はまれだ。
確かに、最近の株式相場は瞬く間に20%下落したが、過去の事例を見る限り、市場が本格的に反発するには、下落よりも長い時間がかかる傾向がある。現時点で、株式市場は下げ相場に入ってから1か月経っていない。過去の下げ相場は、最短のものでも終わるまでに3か月かかっている。さらに長いものでは1~2年間にわたって続いた。
今後の動きは、アメリカ経済の行く末、具体的には景気後退のリスクにかかる部分が大きい。株式相場は、これまでの最も極端な例でも60%前後の下落で底を打ってきたが、これを今回のケースに当てはめると、株価は現在のレベルからさらに半値にまで落ち込むことになる。
とはいえ、大半の例では下落は30%ほどで収まっている。であれば、現在の株価から10%強の下落で済むだろう。ただし当然ながら、今回の下げ相場が過去の事例と同じコースをたどるという保証はない。
アメリカの景気後退突入の可能性は
株式市場は、景気後退突入とほぼ同時期に下げ相場に転じるケースが多い。さらに現在は、これ以外にも景気後退を警告するサインがいくつか出ている。イールドスプレッドが広がっているほか、2019年には長期と短期の利回りが逆転する逆イールドが起きた。
また、今後発表される失業率をはじめとする雇用統計データも、思わしくないものになるとの見方が強い。また、株式市場の下落自体も景気後退の前触れとされているものの、その精度は他の指標と比べてそれほど高くない。
というわけで、今後景気が後退する、あるいはすでに景気後退状態にあるとは言い切れないものの、株式市場が下げ相場に転じたことで、2020年内に景気が後退する可能性は多少上昇したと言える。本当に景気が後退すれば、現在の下げ相場はさらに底を探る展開になるおそれもある。
過去の事例を参考にするなら、下げ相場は、今後もそれなりの期間にわたって続く可能性が高い。ボラティリティも、落ち着きを見せるまでにはまだ時間がかかりそうだ。次の焦点は、現在の混乱した状況が、景気後退を引き起こすほどの影響力を持つかどうかだ。仮にそうなれば、株式市場はもう一段階の下落を余儀なくされるかもしれない。