経済・社会

2020.03.19 20:00

日本で新型コロナが「感染爆発」しない理由

Getty Images

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3月11日、ドイツのメルケル首相は、「ドイツ国民の60%から70%が新型コロナウイルスに感染する可能性がある」と警戒を呼びかけた。

こんなことが本当に起こりえるのだろうか?

これが現実になった場合、感染者のうち1~2割が重症化し、入院治療が必要になること考えると、医療崩壊は免れないだろう。しかし、私はそうはならないと考える。その理由は新型コロナの感染拡大パターンにある。

新しい感染症が入ってくるとどうなる?


メルケル首相の言葉は、新しい感染症に対する基本モデルに基づいている。

ある感染者がその感染症に対する免疫を持たない集団に入ってきた場合、かなりの勢いで広がっていく。しかし、集団免疫という考え方がある。

感染から回復し免疫を得た人々が「免疫の壁」として立ちはだかるようになり、未感染者が感染者から感染するのを阻止する形となるのだ。すると、一定の未感染者を残しながらも、感染拡大は停止する。ウイルスの感染力が弱まって感染拡大が止まるわけではない。

60%から70%が感染のカラクリ


ある感染者がその感染症に免疫を全く持たない集団に入ったとき、感染性期間に直接感染させる平均の人数を「基本再生産数」と呼ぶ。これが1より大きければ感染は拡大し、1であれば感染は定常状態となり、1未満になれば感染は終息に向かう。

新型コロナ、インフルエンザ、SARS の基本再生産数はだいたい2~3といわれている。

計算式に当てはめると、基本再生産数が3のとき、集団免疫による感染拡大停止までに67%が感染することになる。

メルケル首相が、「国民の60%から70%が新型コロナウイルスに感染可能性」を示唆した背景には、この計算があるのだろう。しかし、これは集団が新型コロナに対して全く免疫を持っていないという仮定に基づいている。

私たちは新型コロナウイルスへの免疫を持っている?


2009年にパンデミック化した新型インフルエンザを思い出してほしい。基本再生産数が3だったとしても国民の6~7割が感染するようなことはなかった。季節性インフルエンザに対する免疫が、新型インフルエンザにもある程度有効だったと私は考える。

そもそも「新型」ではない「コロナウイルス」は、主に子供の風邪のウイルスとしてありふれたものである。これは「新型コロナウイルス」とは別物であり、多くの人が年に1,2回は感染している。

そのため、子ども、子育て世代、小児科医などは新型コロナに対しても免疫を持っているかもしれない。

また、新型コロナは8割が軽症である。無症状で経過する人も相当数いる。日本には春節前から多くの中国人が訪れていた。あくまで推測の域をでないが、既に日本人の多くが自分でも知らない間に感染しているかもしれない。そうであれば、先に示した集団免疫の作用で感染爆発は起こり難い。

またメルケル首相の発言には「仮に政府が何の対策をとらなかったら」という仮定も入っている。しかし、日本も含め多くの国が既に強い対策に打って出ており、また人々は行動変容を起こし、大勢の人が集まるところに出かけることを控えている。よって、無防備に感染が拡大するとは考えにくい。

新型コロナの感染拡大パターンは、次のようなものである。
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文=浦島充佳

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