エアロゾル感染のリスクは「換気」で減らす
3月9日の専門家会議の記者会見で「みなさまにお願いしたいこと」として以下の点が指摘された。
1. 換気の悪い密閉空間、2. 多くの人が密集、3. 近距離(互いに手を伸ばせば届く距離)での会話や発声 という3つの条件が同時に揃う場所や場面を予測し、避ける行動をとってください。
これを多くの市民が実施できれば、クラスター発生を予防でき、国が強権を発動せずとも感染は終息に向かうであろう。実際、諸外国と比べて日々の感染者数は数十人で収まっている。
ただ、人は同じ説明を聞いても、何も気にせず日常生活を送れる人もいれば、家から一歩も出られない、仕事にも行けない人まで様々であろう。レストランで外食したり、会社で仕事をしたりというのは上記1・2・3にあてはまるからだ。
そこで、人々の不安を少しでも解消し、対策の一助になればと思い、感染のメカニズムを解説したい。
会話やくしゃみで飛沫が飛び散る。大きな飛沫は放物線を描いて地面に落ちる。しかし、目に見えないくらいの小さな飛沫粒子、いわゆるエアロゾルは数時間室内を空気のように浮遊する。
大きな飛沫による感染は(3)の近距離での会話や発声に対応する。これは、お互いにマスクをしていれば予防できるし、マスクがない場合には1~2メートルなど距離を開ければ解消できる。
エアロゾルによる感染は(1)の換気の悪い密閉空間に対応する。新型コロナウイルスは1時間で半減するものの、数時間は感染性を保ったままエアロゾルとして空中を浮遊することが最近アメリカの研究チームにより報告された。これは窓を開けて空気を入れ替えれば、解消される。外であれば、まず問題にならない。
人数が数十人、数百人と多くなればなるほど、その中にウイルスをもった人がいる確率があがる。(2)の多くの人が密集というのは、このことを指している。しかし、新型コロナの発生がほとんどない地域では気にしなくてもよいかもしれない。
「3つの条件が同時に揃う場所」を言い換えれば「1つの条件が解消されていれば避ける必要はない」ということである。例えば十分な換気をはかれればよいことになる。また十分な換気ができなければ、マスクをするか、距離をとればよいことになる。
今後の日本は如何に?
2月後半、1日の報告件数が10人、20人と増えだした。これに対して、日本政府は在宅勤務の推奨、大型のイベント自粛、休校を要請した。
患者数の推移を海外と比較すると、日本は地域を封鎖したり、移動制限や外出自粛を強要したりすることもなく、何とかよく持ちこたえていると思う。これは政治決断の効果でもあり、日本人1人1人ができることをやっている成果であるとも思う。
今後は、患者数の推移を慎重にみながら、屋外や換気を十分するといった条件で、社会活動を少しずつ再開してもよいのではないだろうか。とはいえ、大規模イベントや、今までクラスターのあった場所での活動の再開は慎重にするべきである。
危機管理の基本は、初動において厳しい対応をして、様子を観ながら徐々に緩めるのが鉄則だ。