ビジネス

2020.03.20

「企業大絶滅時代」のCEOに求められること

「C3.ai」CEO トーマス・M・シーベル


ビジネス界も同様だ。米電気自動車メーカーのテスラ、米ライドシェア最大手のウーバー・テクノロジーズ、民泊仲介サイト最大手の米エアビーアンドビー、米アマゾン・ドット・コム。どれも、新種のDNAを持った企業ばかりだ。エラスティック・クラウドコンピューティングやビッグデータ、IoT、AIを駆使して自動車業界や旅客輸送、小売りなどの業界を一変させ、消えつつある既存企業に代わり、その空白を埋めている。

新テクノロジーを活用すべくトップ自らが陣頭指揮を執らなければ、会社が消滅するか買収されるか、いずれの道しか残されていないことをCEOはわかっているのだろう。新テクノロジーの導入をめぐり何が起こっているか、そして、それがいかに大切かを伝えるために、この本を書いた。

──すばり、デジタル変革とは何ですか。単なるデジタル化や自動化とは違うのですよね。

AIを導入し、製品の設計・製造、サービスの提供、カスタマーサービス、組織管理の仕方を変えることだ。政府も同じだ。AIで米国の陸軍や空軍、中央情報局(CIA)などの運営方法を変える。AIで製品や公共サービスの質を高め、顧客や利用者の満足度を上げるのだ。デジタル変革とは、クラウドコンピューティングとビッグデータ、IoT、AIの集合体だが、最初の3つのテクノロジーを基に、AIで「予測分析」を行うという意味で、AIこそがデジタル変革だと言える。

──あなたは大学院生時代、米社会学者ダニエル・ベルの『脱工業社会の到来─社会予測の一つの試み』(ダイヤモンド社)に影響を受けたそうですね。ベル教授は「脱工業化社会」という用語を生み出したそうですが、同書のどのような点に影響を受けたのですか。

彼は、私のキャリアに大きな影響を与えた。大学院でコンピュータ科学を学んでいた頃、『The Coming of Post-Industrial Society』(『脱工業社会の到来』 原書出版は1973年)に出合った。40年にわたるキャリアを通じて、私は、まさにベルが描いたビジョンどおりの変化を体感してきた。

彼は、実に説得力のある論拠を展開した。世界経済の構造が変わり、ITやデータ、データの精度・瞬時性によって、働き方や意思疎通の方法、余暇の過ごし方が変わると予測したのだ。その予測どおり、ITがすべてを変えた。手紙がメールに取って代わり、紙の新聞など読まれなくなった。1973年当時はインターネットも携帯電話もなかったが、彼は天才的な先見の明で、私たちの仕事や人間関係の本質が変わると見越したのだ。

今日、その変化が加速度的に速まっている。AIの世界で起こっていることは、ベルのビジョンが具現化した究極の姿だ。彼の主張は論理的で刺激に富んでいたため、私は生涯を懸けて(ITに)取り組もうと思った。
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インタビュー=肥田美佐子

この記事は 「Forbes JAPAN 4月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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