発表の3週間後、トランプ大統領は中国との全面的な貿易戦争を開始し、中国からの輸入品数千億ドルに対して関税を課すことをぶち上げた。これを皮切りに、ホワイトハウスは中国に対する制裁措置を次々と発動させ、中国株式市場は大混乱に陥った。その後の18カ月間で、S&P500指数が11%上昇したのに対し、MSCI中国株式指数は16%の下落となった。
「中国関連は顧客受けがあまり良くありません」。今年、41歳になるメータは、ボストン港を見渡せるフランクリン街のオフィスでそう明かしてくれた。
「しかし、ノイズは無視しなくてはなりません。中国は資本純輸入国に転じようとしており、市場自由化の取り組みを続けています」
メータと共同マネジャーのビン・シーは、株価純資産倍率(PBR)、業績サプライズ、相対価値、会計上の異常値など、ファンダメンタルズとテクニカルに関する100種類もの変数を利用して上海市場と深圳市場に上場している3500社の企業をスクリ ーニングするアルゴリズムを活用している。ムが斬新な定量的手法を駆使して運用するこの戦略の預かり資産は18年4月の運用開始当初の1500万ドルから大きく成長し、現在は1億3800万ドルを上回る規模となっている。
アカディアンは市場が完全に効率的であり、利用可能なすべての情報が価格に適切に織り込まれているという考え方を否定しており、株式市場をマカオのカジノに近いものと考えている個人投資家が市場参加者の80%を占める中国市場には、こうした考え方が特にあてはまらないと考えている。
メータによれば、「北京語で株式売買を指す言葉には『強火で炒める』という意味があります。それだけ熱いものだということです。WeChat(微信)の書き込みで株価が動くことも珍しくありません」という。また、さらにこう語る。
「競合他社の中には、センチメントや固有リスクの影響が強すぎて、中国市場では定量分析が機能しないと考える企業もあります。しかし、システムを利用して、投資対象をファンダメンタルズが魅力的な企業に絞り込むことにより、アルファ(ベンチマークを上回るリターン)を生み出すことが可能です」
アシャ・メータ◎共に研究医であったインド人の父とユダヤ人の母の下、フロリダ州に生まれる。夏休みにインド・デリーの西側にあるビワニという貧しい小さな町に住む父方の祖父母の家にたびたび滞在した経験が、新興国分野におけるキャリアの原点となったという。