空飛ぶクルマで出勤は30年以内に? 今夏に日本発、有人デモフライトへ

SkyDrive・CARTIVATOR


空飛ぶクルマが世界に与えるインパクトとは

「エアーモビリティを作っていますけど、最もやりたいことは、日常的に空を使って移動することによって、楽しく効率よく移動することができる世界をもたらすことがゴールです」と福澤は言う。開発で最も大変なのは、有人飛行や一般販売に向けた、これからだ。

空飛ぶクルマが日常にある生活は、一体どんなものになるだろう。福澤はこんな世界観を描いている。

例えば、郊外から空飛ぶクルマで通勤すると何もできない往復の移動時間が短縮されるだけでなく、車内というプライベート空間で自分の時間を過ごすことができる。街の景色も変わるだろう。例えば今の世界では、主要交通機関である駅を中心に商業施設や住宅が立ち並んでいるため、都市の中でも人が偏っている。“空を使う”という移動手段が加われば、人が分散し、これまでよりも多くの範囲に施設ができる。街づくりが変化すれば、人々のライフスタイルも変化する。移動が面倒なものでなくなれば、近場の人以外とも対面する機会が増え、出会いが増える。

空飛ぶクルマの出現はそれ自体が画期的なだけでなく、文字通り生活の様式を変えるだけのインパクトをもたらすだろう。


SkyDrive・CARTIVATOR

「道路を作らなくていいから楽ですよね」


SFの世界でしか見たことがないものを、本当にゼロから生み出している。さぞ熱い思いに溢れる人だろう、と予想してインタビューに臨んだが、聞いてみると学生時代の夢は「サラリーマン」で、車が特段好きというわけではなかった、と淡々とした様子。しかし、自分が面白いと思ったものを素直に追い求め続けるには、忍耐と強い思いが必要だろう。

「空の上に道路のような導線を敷くのは、見えない分難しそうですね」という筆者の質問に対し、福澤は「そうですね、難しいとも言えるけど道路を作らなくていいから楽ですよね」と切り返す。

飛行機のように上空に見えない航路を事前に設定することで、事故が発生することを防ぐという。

今までになかったものへの恐れが全くなく、むしろ、と考えられる潔さと自信がここまでの成功の鍵なのだろう。既存の世界を変えるには何が必要か、ロジカルに取り組むことで「不可能」なんてものは考える余地もなくなる。空想の世界を現実にしようとする者には、淡々と綿密に、しかし理想的なものづくりを諦めない熱さがあった。

SkyDriveは屋内飛行試験を終え、有人飛行試験を昨年12月に開始した。安全性検証、操作確認、飛行実績を積み重ね、実用化に向けての整備を行なっている

また、今年夏には有人でのデモフライトを予定しており、2023年の販売開始を目指す。さらに2050年までには誰もが日常的に空飛ぶクルマを運転し上空にクルマが行き交う世界を描き、これからも開発を続けていく。

文=河村優

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