ビジネス

2020.03.24

ルワンダと日本をつなぐ 高校生が生んだ「貧困解消ビジネス」

山田果凛(左)と永野理佐(右)

年平均7%の経済成長を続け、「アフリカの奇跡」と呼ばれるルワンダ共和国。首都のキガリを1年ぶりに訪問した。キガリ市のルビンギサ・ピューデンス市長と話をすると、現在の人口は170万人だという。5年前、私が初めて訪れたときは120万人であったから、5年で実に50万人が増加したことになる。確かに、ひどくなった交通渋滞から、ヒトとクルマが増えたのを肌でも感じた。

この経済成長を支えるのは、首都での人口増に伴う中間層の拡大だ。ところが、国民1人当たりの年間所得でみると、5年間で年率3%程度の増加で、これは国全体のGDP増加の半分程度だ。貧困層の人々の生活レベルは良くならないという現実が、数字からはうかがえる。

貧困層を救う高校生のプラン


神戸市はそんなルワンダで、新しいビジネスを生み出すプログラム「KOBE STARTUP AFRICA」を実施している。グローバルに活躍しようとする若者の挑戦を後押しするために昨年から始めた試みだ。

今年は、全国からの応募者約40名から選ばれた14名(社会人5名、大学生と院生7名、高校生2名)が参加。2月22日にルワンダに集った。このプログラムでは、14名が2週間、いくつかのチームを組んで、住民たちが抱える課題に向き合う。終盤に、現地で成功した起業家たちが審査員となり、各チームが考えたビジネスプランの発表会が行われる。

驚くべきことに、これに優勝したのは高校生を代表とする2つのチームであった。両者のプランはともに、シングルマザーなど苦しむ貧困層に光を当てようとするものだった。

元を取るのでなく、売上を立てる


東京にある郁文館グローバル高等学校3年の永野理佐が、テーマに選んだのは「石鹸」だ。ルワンダは、世界で最も女性国会議員の比率が高いといわれているが、貧しい農村の女性たちの衛生環境はまだまだとても厳しい。

そこで、彼女たちに普通の白い石鹸ではなく、葉っぱやビー玉を入れた風変わりな石鹸をつくってもらい、半分は彼女たちが使い、残りの半分を日本に持って行き、石鹸をつくった女性の笑顔の写真やメッセージカードを添えて売れないかと考えたのだ。

まずシングルマザーがたくさん働いている飲食店に頼み込んで、彼女たちと一緒に石鹸をつくってみた。そのあと、日本ではなくそもそもルワンダでは売れるのだろうかと考えながらも、地元のキミロンコ市場に石鹸を持ち込んだ。

最初は、玩具店の店員を狙った。石鹸に封入したビー玉をこの店で仕入れたからだ。すると、いきなり1個が1000ルワンダフラン(約120円)で売れた。次に、顔なじみの店なら買ってくれるだろうと布地屋に持って行くと、「こんな変な石鹸が使えるか。まあ100ルワンダフラン(約12円)なら買ってもいい」と酷評された。仕方なく100ルワンダフランで売ると、それを見た周りの人々が「買いたい! 買いたい!」と次々と押し寄せた。


キガリ市内の市場で永野の石鹸は飛ぶように売れた

審査員が評価したのは、参加者のなかでただ1人、こうして「売上を立てよう」とした彼女の行動だ。ほかの社会人や大学生のプランは、材料費や運送費を計算して、いくらで売れば「元が取れるのか」考えるだけにとどまった。本気でビジネスをするには、お金を払ってくれる顧客がいるのか、何を欲しているのかを見極めるアクションが必要で、彼女はそれを実際に実行に移したのだ。
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文=多名部重則

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