ビジネス

2020.03.24

ルワンダと日本をつなぐ 高校生が生んだ「貧困解消ビジネス」

山田果凛(左)と永野理佐(右)


沖縄クリスチャンスクールインターナショナルに通う山田果凛。彼女が注目したのは、ルワンダ特有の「イミゴンゴ」と呼ばれる幾何学のアート作品だ。子牛の糞と灰という天然素材を使用し、現地の住民がハンドメイドしている。デザインにひかれた彼女は、お土産に持ち帰ろうと考えたが、あまりにも大きい。友達50人分はとても運べなかった。


ルワンダの伝統アート「イミゴンゴ」

一方で、毎日、宿泊先の近くに住む子どもたちが「お金が欲しい」とせがんでくるのを見るのが、心苦しかった。10歳から6年間、タイに留学し、インドの孤児院でインターンも経験した彼女の中で、生まれた場所だけで子どもの将来が左右されることへの憤りが再燃した。

そこで、その思いをチームメンバーである早稲田大学商学部の大下直樹に打ち明けた。大下はシアトル留学中に現地のスタートアップ企業で働き、世界的なIT企業への就職が内定している。

2人の頭に、あの「イミゴンゴ」を小さく切ってイヤリングの部品にして、日本で販売することが閃いた。イヤリングづくりをあの子どもたちの母親の仕事にするのだ。仕事にすることにこだわったのは大下。なぜなら、ビジネスになれば続けていけることを知っていたからだ。

山田は、大下の考えに惚れ込んだ。すると、今度は持ち前の行動力を活かして、現地で20人の母親たちを集めて、イミゴンゴのイヤリングをつくった。作業台となったテーブルは、ペンキだらけになったが、楽しそうに一所懸命に働く母親たちをみて、これはうまくいくと確信した。

山田と大下は、帰国するとすぐに、ルワンダでつくったイヤリングを試行販売するクラウドファンディングをはじめた。「ルワンダでうまくいけば、他のアフリカの国でも同じモデルを導入したい」と山田は熱く語った。


イミゴンゴのイヤリング

「ルワンダを知ってもらいたい」


石鹸づくりに挑んだ永野は、神戸市のプログラムのあと、キガリ市を離れて、国境近くの農村を訪れた。そこで、文明から切り離され、1日1ドル以下で暮らす最貧の村の子どもたちを目の当たりにする。

「石鹸をつくったときのシングルマザーたちの笑顔が忘れられないが、もう石鹸にこだわることもない。まずは、日本人にルワンダを知ってもらいたい。日本でワークショップや笑顔の写真展を開きたい」とあらためて決意したという。この秋に英国の大学に進学する彼女だが、それまでにやることは山ほどありそうだ。

2人の高校生が不思議な形でつないだ、ルワンダと日本。両国の関係がこれからどんな発展を遂げていくのか、大きな期待を込めて見守りたい。

連載:地方発イノベーションの秘訣
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文=多名部重則

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