テクノロジー

2020.03.21 19:00

テクノロジーの悪影響をめぐるうそ 唱える人が減らないのはなぜか

Rainier Ehrhardt/Getty Images

Rainier Ehrhardt/Getty Images

皆さんは、次のような意見を何度耳にしたことがあるだろうか? 「炭素排出量を減らそうという意見がここぞとばかりに叫ばれている割に、大量の電力を消費するデータセンターで運用されるアプリを誰もが使っているじゃないか」

最近の調査では、主にテクノロジー業界の効率性向上努力により、データセンターの電力消費量は比較的少ないことが示されている。つまり、データセンターの効率性はかつてなく向上しており、エネルギー消費量が予想よりも減っているのみならず、業界全体としての持続可能性に対する取り組みのおかげで、多くのデータセンターの電力源が再生可能エネルギーでまかなわれているのだ。クラウドコンピューティングのアウトプット量は6倍に拡大しているにもかかわらず、エネルギー消費量はわずか6%の上昇にとどまっている。

データセンターを大型施設に集約するトレンドによって、クラウドコンピューティングの出現以前に使用されていた小型のローカルサーバーよりも効率化が大幅に進んだ。炭素排出量の削減がラッダイト運動的な考え方であるだとか、テクノロジー無き世界を訴えるものだとする考え方はばかげている。炭素排出量の削減や責任ある消費と、テクノロジーの頻繁な利用は、両立が完全に可能だ。

こうした有害な作り話は、いまだに広まっている。例えば「ロング・テールパイプ論」は、電気自動車は充電に必要なエネルギーが化石燃料によって生産されるため、ガソリン車やディーゼル車よりも汚染を多く生むという誤った考えに基づいている。このナンセンスを反証する事実はいくらでもある。自動車のエンジン内での化石燃料燃焼は、大規模産業施設での燃焼と比較してかなり効率が悪い。もちろん、発電の脱炭素化は早ければ早い方が良い。しかし、発電に化石燃料を使用したとしても、内燃エンジンを搭載した車を電気自動車に置き換えた方が環境に良いのだ。

これは常日頃から起きていることで、心理学の分野からも説明がなされている。人は急速に変化する環境に置かれると、もっともらしく聞こえ安心できるこうした作り話を鵜呑みにしてしまうことが多いのだという。しかし、先述の調査では、データセンターは地球を汚染していないという結果が出ている。さらに、今は多数の電気自動車を充電可能なインフラが整備されているし、電気自動車のバッテリーももはや処分が不可能な有毒廃棄物とはならない。

作り話は、何度繰り返したとしても作り話には変わらない。何を信じて良いかを慎重に見極めて、一見常識のように思える話にも疑問を投げかけること。実はそれがナンセンスであることもあるのだ。

編集=遠藤宗生

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