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2020.03.25

映画界の至宝、ダスティン・ホフマンが人生の意義について語る

2019年12月8日、東京芸術財団主催、ミスズ共催の「クリスマス・てんこ盛りアート展示会!」のゲストに、名優、ダスティン・ホフマンが登場。

トークショー前に会場入りしたホフマンに、82歳にしてなお芸道を探求し続ける理由を聞いた。


すべての時間を映画と家族に捧げる

感動作でありながら観賞者の間で大論争を巻き起こした『クレイマー、クレイマー』(79)。女装コメディの面白さを世に広めた『トッツィー』(82)。鮮烈なラストシーンがいまなお鮮明に蘇る『卒業』(67)。

1990年代にはすでに「後世にその名を残す偉大な役者」と評されたダスティン・ホフマン。映画芸術の発展への貢献を疑う者はいない存在だ。

残念ながら日本とは縁遠く、世界中から絶賛された2012年の初監督作品、『カルテット!人生のオペラハウス』のジャパンプレミアに出席したときには、21年ぶりの来日であったことが、ことさら強調されたほどである。

理由がある。ホフマンは映画俳優の道を選んだときに、すべての時間をアーティストとして生き、家族のために捧げるという決意をし、82歳になった現在もその哲学を貫いている。

アーティストとしてパフォーマンス向上のためのルーティンに余念がなく、家族との時間を何よりも大切にする。そんなホフマンがなぜ、年末に、数日間の滞在という過密スケジュールを組んでまで、4度目の訪日を決めたのだろうか。

「20代のころに演劇の勉強を始めたとき、憧れの映画スターがふたりいました。ひとりはマーロン・ブランド、もうひとりは三船敏郎さんでした。黒澤明監督の映画もずいぶん観ました。黒澤監督の撮影手法にはいつも驚かされるばかりで、いつかロケ地に足を運んでみたいと思っていました。日本にはいま、ビジネスパーソンでありながら、イタリア語でオペラを歌い、画家や書家としても名高い、『現代のルネッサンスマン』と呼ばれる人がいるという話を聞いていました。その人物にお会いしたく、今回の訪日を決断しました」

世界的名優がわずかな時間でも対面したいと思わせる人物こそ、HANDA Watch Worldを運営するミスズ社長の半田晴久氏なのである。

弱者に寄り添った真のチャリティ

「ここ数年、世界中のあらゆる場所でテロが頻発しています。ニュースでは、生存者数、死者数、重軽傷者数などの情報が流されますが、平穏を取り戻すとしだいに多くの人がそのことを忘れていく。生き残った人々のなかには視力を失ってしまった人、足が切断されてしまった人もいます。重傷を負った人には支援が必要です。半田さんは、そうした人々に寄り添い、苦境に陥った人の心痛を癒やすために、スポーツを通じて傷ついた人々の心身をケアしているのです。本当に素晴らしいことだと、私も感銘を受けています」


2019年12月6〜10日の5日間、東京芸術財団主催、ミスズ共催で開催された「クリスマス・てんこ盛りアート展示会!」。ダスティン・ホフマンは8日のゲストとして出演するために、夫人とともに来日を果たした。

例えば、半田氏が会長を務めるISPS(国際スポーツ振興協会)が主催するPGAツアーのプロアマ戦には、ブラインドゴルファーや障がい者ゴルファーにも生き甲斐を感じてもらおうと、世界最高峰のプロゴルファーたちとともにプレーする機会を提供している。

ホフマンのチャリティ活動は、彼らしい信念のもとで実践されていた。

「だいぶ昔の話ですが、妻の従兄弟の子どもが6歳のときに血液のがんに侵されました。外で遊ぶことを医者に止められているのに、その子はどうしてもサマーキャンプに参加したいと言い出したのです。当時、白血病の子どもを受け入れてくれるキャンプ場はありませんでした。

その記憶がずっと残っていて、数年前にがんを患っている子どもでも参加できるキャンプ場をつくったのです。病院が近くにあり、子どもたちに異変が起きたときにはすぐに大きな総合病院へ連れて行けるようにヘリを数機常駐させました。キャンプ場がオープンした当初は、情けないことに私にはそこへ行く勇気がなかった。子どもたちは楽しんでいないのではないか。ひとりぼっちで泣いている子どももいるのではないか。そんなことばかり想像してしまうのです。

いざ、行ってみると、私の想像とはまったく正反対の光景が広がっていました。子どもたちは自然と触れ合い、生きるために必要なことを懸命に学んでいたのです。キャンプ場は生命力に満ちあふれた場でした。難病を抱える子どもたちは、私よりもずっと賢く、強いということに気づかされました」

自分とは違う別の人間になるということ

ホフマンは、映画俳優は、作品を通して社会貢献すべき存在でなければならないと言う。

「映画『レインマン』(88)で、私はサヴァン症患者のレイモンドの役を演じました。この作品は、自閉症患者への偏見をなくし、世界中の人がこの病気に関する知識を深めるきっかけとなったのではないでしょうか」

ホフマンはレイモンドを演じるにあたり、たくさんの自閉症患者を取材している。こうしたアプローチを取る俳優は珍しくない。ホフマンが並外れているのは、サヴァン症を演じることを重視してリサーチしているわけではないことだ。

レイモンドというひとりの人物の個性を尊重し、心の奥底にある感情をつかむために取材していることにある。まずは、自分が演じるレイモンドの人格に似かよったモデルを探すことから役づくりを始めた。レイモンドのモデルが見つかると、彼が生まれてから今日までに体験したさまざまなストーリーを徹底的に聞き出した。そこにとてつもない時間を割いたのだ。

「映画俳優というのは、10年、20年、あるいは50年の人間の人生をわずか2時間に凝縮させなければなりません。私はあらゆる役柄を演じてきましたが、自分とは違う別人になることが容易だと思えたことは一度もありません。役づくりに1年以上要したこともあります。一つひとつの作品が常に大きな挑戦です。演じる役柄が決まると、どういう過程を経て、その人格が形成されたのか、あらゆる角度から研究します。彼はなぜ、そうするのか、どうしてそのような行動を取らなければならなかったのか、その気持ちを汲み取らなければならないのです」

何事に対しても自ら核心をつかみにいく姿勢は、ブレることがない。そんなホフマンが、インタビューの最後に話したことは、ビジネスパーソンの心にも沁みるのではないだろうか。

「世の中に完璧な人間など、ひとりもいません。誰にでも長所があれば、欠点もある。ところが、ありのままの自分を受け入れるのは、そう簡単ではないのです。少なくとも私の場合は、素晴らしい人間でありたいと願っても、なかなか理想の自分にはなれないことに葛藤し続けています。きっと、一生かけて努力すべきことなのかもしれません」


Dustin Lee Hoffman◎1937年アメリカ・カリフォルニア州生まれ。サンタモニカ市立大学の演劇科を経てニューヨークで教員をしていた60年代にブロードウェイで初舞台を踏む。『The Tiger Makes Out』(67)で映画デビューを果たし、『卒業』(67)の主演で一躍注目を浴びる。『真夜中のカーボーイ』』(69)『わらの犬』(71)『レニー・ブルース』(74)など数多くの作品に出演。『クレイマー、クレイマー』(79)『レインマン』(88)で、2度のアカデミー主演男優賞を受賞している。

Promoted by ミスズ /text by Hiroshi Shinohara / photographs by Hiro Tamura / edit by Akio Takashiro

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