5G元年、スポーツ配信は進化する。放映権「ダム崩壊」の危険性とは

ソフトバンクのCMにも起用された八村塁 (Getty Images)

YouTube到来のように、5G時代には抗えない


ユーザーが簡単に動画をアップロードできるSNSが登場した当初、メディア関係者は「著作権法違反を招く」と積極的に取り組むことはなかった。テレビ放送からひっぱりだされた動画は予想通り著作権に抵触する運びとなり、YouTube側が削除する動きもあった。

しかし、YouTubeが動画インフラとして多大な露出力を誇るようになると、むしろミュージシャンが公式PVをアップ、スポーツ団体やテレビ局でさえ「公式チャンネル」をYouTube上に抱えるような現在となった。今ではインスタやTikTok、17 Liveなどさらに広がりを見せている。

ユーザーによる動画の即時アップロードやLIVEストリーミングは、5G時代の到来により現在よりも、より普遍的なソリューションへと脱皮する。YouTubeにより動画チャンネルが常識的になった過去と同様、その流れは止めようがない。この潮流は、ダムの決壊のごとく、一度崩れてしまえば、もとに戻すことは不可能だ。

実際、テレビを視聴する側からしても、限定されたアングルしか提供されないテレビ放送と、スタジアムを取り巻く観客が無数のアングルから提供してくれる映像とどちらが興味深いだろう。編集や音声のクオリティ差は残るが、4K/8Kそして5Gの到来により、画質としてはプロとアマの差異は、かなり埋められてしまう。

これが実現すると、収まらないのは高い放映権を支払いオンエアしているテレビ局だ。ユーザーによる動画放送を取り締まることができないなら、「放映権を値下げしろ」という論調も飛び出すだろう。

これはIOCを始め、MLBやNBAなどスポーツ団体も収入減を招きかねない。また、放映権の売買などを生業としている電通に代表されるような世界の大手エージェントも、利権を失う。そうだとしても、スポーツ放映権の「ダム崩壊」は、YouTubeの到来のように、抗いようがない。

5Gの波とともに押し寄せるスタジアムの観客達によるユーザー・ジェネレイテッド・コンテンツ(UGC)とスポーツ放映権の「ダム崩壊」が生み出す、スポーツ視聴の新しい形態は果たして、どんな未来を作り出すだろう。

これから、その未来を探って行きたい。

連載:5G×メディア×スポーツの未来
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