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2020.03.19

アウトドア企業「パタゴニア」が訴える利益より大切なもの

Sundry Photography / Shutterstock.com

パタゴニア創業者でビリオネアのイヴォン・シュイナードは、目先の利益を犠牲にしてでも、自社のコミュニティを第一に考えるスタンスを打ち出した。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、パタゴニアは全ての店舗を一時閉鎖するが、休業中も社員らには通常と同じ賃金を払い続ける。

「感染拡大の影響がどのような規模に及ぶかは定かではないが、当社としてはまず我々のコミュニティの安全を最優先することを決定した」とパタゴニアCEOでプレジデントのRose Marcarioは3月13日、公式サイトで宣言した。

小売業界ではアップルやワービー・パーカー、アーバン・アウトフィッターズらも一時休業を決定し、従業員らに有給休暇を与えている。

1973年にイヴォン・シュイナードが創業したパタゴニアは、米国や欧州、日本、アルゼンチン、チリの全ての店舗を3月13日から閉鎖している。同社は3月27日に状況を再度確認し、その後のオペレーションを決定するという。

パタゴニアは社員数を開示していないが、企業データベースのCraftでは2300人以上とされている。同社はプロダクトの製造は続行するが、米国のEコマースサイトも「安全が確認できるまでの期間」は運営を停止すると、広報担当のCorely Kennaは述べた。

現在81歳のシュイナードは日常の業務からは離れており、声明も出していない。しかし、2017年のフォーブスの「世界の富豪ランキング」に資産額10億ドル初めて登場したシュイナードは、風変わりな経営者として知られ、利益の追求よりも自身の信念を貫く姿勢を通してきた。

2018年11月の決算発表で、パタゴニアは1000万ドルの追加利益を計上したが、これはトランプ政権がその前年に導入した「無責任きわまる企業減税措置」のおかげであるとシュイナードは述べ、全額を自然保護団体に寄付すると宣言した。

自身も登山家であるシュイナードは1957年に、独学でロッククライミングに用いるピトン(鉄クギ)の鋳造を始めた。彼が設立したシュイナード・イクイップメントは、1970年までに、米国最大のクライミング・ギアのサプライヤーとなった。

しかし、クライミング人気が高まる中で、ヨセミテ・バレーなどの人気エリアでは、鉄製のピトンが、岩を傷つけ、自然に害を与えていることをシュイナードは知った。

その後、彼は会社の売上の70%を生み出すピトンの製造をやめることを決断し、新たなプロダクトの開発に乗り出した。そして、1972年に生み出されたのが、ハンマーを使わず手で岩に押し込むことが可能で、繰り返し利用できるアルミ製のチョックだった。

世界的アウトドアブランドに成長したパタゴニアは、再生プラスチック素材を用いたアパレルなど、サステナブルな取り組みで知られている。同社の売上は、年間8億ドル規模に達し、自然を愛する人々に支持されている。

編集=上田裕資

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