キーワードは「おおらかさ」──業界未経験だからこそ気づけた、公園の新たな可能性

INN THE PARK 支配人 山家渉氏


「おおらかさ」と「新しさ」がある公園


INN THE PARKがもつべき役割を考える上で、山家氏は公園の可能性と向き合った。そこで見いだしたキーワードが『おおらかさ』だ。公園をどう使うかは、使う人が決められる。その自由さこそが公園の魅力だという。

「ホテルと名付ければ『ホテル』になってしまいますし、グランピングと言えば『グランピング』になる。言葉による定義は、イメージも、過ごし方も固定化させてしまいます。『公園』には人それぞれの過ごし方があります。最近の公園は禁止事項が増えていますが、本来はもっと自由に楽しめる場所のはず。

私たちは、そんな公園のもつ『おおらかさ』に寄り添いたいと思い、場を作っています。たとえば、部屋は公園の森の中にありますし、まだ実現できていませんが、芝生にライブラリーを置いたり、川辺にバーを出したりといった計画もあります。宿泊施設の要素を公園に点在させることで、公園の持つ動きのある風景や、何かできそうなワクワク感をもっと強く伝えたいんです」

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INN THE PARK 支配人 山家渉氏

ここには、一般的な公園のような制約は少ない。だからこそ、どこの公園にも存在しない景色や体験が実現できるという。

「これまでになかった『公園×◯◯』の風景を作りたいと思っているんです。例えば、球体テントは当館のために作ったオリジナルで、森の中にテントが浮かぶ風景を作りたかった。芝生と遊具がある既存の公園にはない、そんな新しい価値や意外性を提供したいと考え、日々新たな景色を模索しています」

お客さまの要望に沿ったお手伝いができるように


公園のもつ「おおらかさ」を存分に活かしたINN THE PARKは、当初からターゲットを大人中心に考えていた。公園という場所の特性を加味すると、子連れのファミリーがメインかと思いきや、そこはあえて意識しないようにしているという。

「子どもにとって公園は遊ぶだけでも十分楽しめる場所なので、あえて子ども向けに特別なサービスやコンテンツを考えることはしませんでした。むしろ、ウェイトを置くべきは親である大人。一般的な公園は、遊びに行くことと、その日に帰ることをセットで考えねばなりません。大荷物は避けたいだろうし、帰るだけの体力や気力も残しておかなければいけない。

公園で過ごす時間を、存分に楽しむわけにはいかない場面もあります。でも、当館は泊まれる公園。ビールを飲んでもいいし、子どもたちを芝生で遊ばせながらマッサージを受けてもいい。大人が楽しめる要素を大切にしているんです」

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文・取材/葛原信太郎 編集/小山和之 撮影/須古恵

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