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渋谷区から始めるコレクティブ・インパクト


「行政だからできること」の再発見


「渋30」では、どのセクターのメンバーも、自組織のリソースをどのようにシェアできるのか、あるいは本事業と「渋30」でどんな相乗効果を発揮できるのかを検討していく。そして、一つの組織ではできないことをクロスセクターの力で実現しようと構想・企画し、各自が自分の組織に働きかけていく。

振り返ると、公務員はプログラムの初期において、出てくる提案に「支援するだけ」というスタンスをとりがちな傾向にある。それが、他セクターと対話をすることで、「行政に求められていること」「行政にしかできないこと」を認識するようになり、気がついたら言葉の節々に「自分はこう思う」「自分はこうしたい」と、自分自身の熱意やビジョンが表れていく。

一方で、「公益性や公平性の担保」という現実も忘れてはいけない。これにおいては、熱意を持って庁内の関係者にビジョンを示し、共感者、理解者を増やすアプローチをとる。

前述のMさんは、自分のビジョンが明確になったところで、庁内で「落書き消し」の現場に一緒に参加しようと呼びかけた。体験を共有する仲間を増やすことで、このプロジェクトへの理解促進や機運醸成を図り、環境政策課のみならず複数の部署を横断したコミュニティを庁内に生んだのだ。

またこのプロジェクトに行政が用具等の提供を行ったり、行政にしかできない国や都との手続きを進めることで円滑に進み、プロジェクトへの信頼性と継続性が確かなものになっていった。

「身内」を巻き込む


ことをさらに動かそうとする際に大事になるのが、具体的な「街の声」だ。企業でいう「お客様の声」にあたる。

「渋30」では、渋谷のさまざまなステークホルダーを招き、「問い」を立て、対話を行うオープンセッションの場を設けることで、その声に耳を傾けている。



落書き消しプロジェクトでは、実際に落書きをしたことがある人、描かれたことがある人、消すボランティア活動をする人、そして所管となる環境政策課からゲストを招き、多様な観点から意見が交わされた。各当事者に直接関わり、想いに寄り添うことは、自分たちの活動の意義についてより確信を深めていくことにつながる。

Mさんは、官民連携による環境講座、他部署や警察、町会等と連携した地域での落書き消しイベントなどを通して、理解者や応援者を増やし、結果として落書き対策も含めた「環境基本計画2018」の推進につながる場づくりに携わった。

「渋谷をつなげる30人」に関して言えば、渋谷区が基本構想として「ちがいを ちからに 変える街。渋谷区」と掲げているため、部署横断や連携を促進し、庁内のムーブメントにしていきやすかったというのはあるかもしれない。

しかし、渋谷区に限らずあらゆる公務員には、ステークホルダーと行政をつなげるコーディネーターとなり、ムーブメントを起こすプロデューサーとなる可能性があるのは間違いない。今後、コレクティブインパクトを創発していくためには、公務員も彼らに関わるメンバーも、ステレオタイプなイメージにとらわれない“クロスセクター”の意識を持つことが成功の近道になるはずだ。

連載:渋谷区から始めるコレクティブ・インパクト
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文=加生健太朗

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