不動産業者はこの間、何とか事業を継続させるため、購入者を呼び込もうと大幅な値引きなどを行った。保有資産およそ280億ドル(約2兆9700億円)、中国第3位の富豪である許家印(Hui Ka Yan)が会長を務め、販売額で中国3位の不動産大手、恒大地産集団(Evergrande Group)もまた、新築住宅の価格を2月に25%、3月(月末まで)に22%引き下げている。
この販売キャンペーンを開始した最初の週、同社が購入希望者から手付金を受け取った住宅は、9万5000戸を上回った。ただし、物件の売買契約に際して買主が売主に預ける手付金の金額は、5000元(約7万6000円)に抑えている。住宅価格が大幅に下落すれば、同社は少なくとも5月末まで、さらに販売価格を引き下げる方針だという。
また、もう一つの不動産開発大手、花様年控股集団(Fantasia Holdings Group)が手付金として求めている金額は、わずか1777元だ。さらに、購入の申し込みを30日以内にキャンセルした場合には、利子を付けた上での返金に応じている。
ナイトフランクの調査・コンサルティング部門のアソシエイト・ディレクター(大中華圏担当)、マーティン・ウォンは、「新型コロナウイルスの感染が拡大する前は、国内の1級都市(上海、北京、重慶、天津)の住宅価格は今年、約3〜5%上昇すると予測していた」と話す。
「感染が拡大し、取引件数が減少したことから、予想を0%から2%の上昇に下方修正した。価格は一時的に下落するとみられるが、1級都市の基盤から考えれば、不動産の需要が弱まることはないだろう」
ウォンによると、上海の住宅の平均価格は1平方メートル当たり5万~6万元。高級住宅は同11万8000元を超える。今年第1四半期に価格が急落しても、全体としては楽観的な見通しを維持しているという。
それは、不動産市場全体がマイナス成長になると見込まれるわけではないためだ。中国政府が市場に影響を与える政策を迅速に実施することで、成長の維持は可能だとして、ウォンは次のように述べている。
「中国の不動産市場は、米国や英国とは大きく異なる。政府が常に、政策によってその時々の市場をコントロールしているためだ。値上がりしすぎだとみれば、政府は価格を抑制しようとする」
「市場の力学によって価格が下がり始めるのを待てば、効果が出るまでに時間がかかりすぎる…そこで政府は、購入を制限する。例えば、上海のように全世帯を対象に、居住用不動産(集合住宅)の購入は2戸までと決められている都市もある。どんなに裕福な人でも、3戸目を買うことは許されない。割当制度が導入されているようなものだ」
政府のデータによれば、規模の大きい上位70都市のうち60%においては、中古住宅の価格は2月中も上昇を続けていたとみられる。一方、第1四半期には主要都市の半数以上において、値下がりが予想されている。ただ、それでもウォンは、「住宅価格は2020年、V字型の回復をみせる」と見込んでいる。