ビジネス

2020.03.22

人間から学んだ成功の法則。マネして理解する「AIの考え方」


3. 学びすぎない──過学習とドロップアウト

AIは、学習をしすぎると、逆に性能が悪くなることが知られています。これは「過学習」や「過剰適合」と呼ばれています。学習した事例にのみ強くなり、応用が利かなくなるのが原因です。ビジネスにおいても「ガラパゴス化」は、国内市場に過剰適合した例といえます。ゲームが常にチェンジしている時代においては、適度に学習しすぎないことも大切。そこで、AIの世界では、「ドロップアウト」という、わざと手を抜いて学習する手法が開発されています。Googleのオフィスに必ず卓球やサッカーのゲームが置いてあるのも、納得です。勤勉で「過剰品質」になりがちな私たちにとっては、参考になる考え方ではないでしょうか。


オフィスに卓球台やダーツなどの設備を揃える企業が、国内外問わず増えてきている。

4. おいしい話はない──ノーフリーランチ定理

AIは万能な存在と思われていますが、AIの理論では万能な存在を否定しています。「ノーフリーランチ定理」という言葉があります。もし、ランチをおごってもらっても、きっと何か裏がある可能性が高いように、そんな都合のいいAIは存在しないことが証明されているのです。

AIにも、得意な問題と不得意な問題があり、すべての問題にベストなAIは存在しません。同じように、ビジネスにおいても万能な戦略は存在しません。個別の課題に合わせて、日本ができることはまだまだありそうです。

さて、AIのキモチを体感できたでしょうか?「AIに仕事を奪われる」と恐れるより、自分がAIになってみたほうがいろいろと役に立ちそうですよね。

一方で、人間の知能のしくみはまだわかっていないこともあります。たとえば、コンセプトを考えるときのように、AIは物事を抽象化することがまだ苦手です。でも、そのアルゴリズムがわかれば、逆に人間が学ぶこともあるかもしれません。


福田宏幸◎電通BチームAI担当。電通データ・テクノロジーセンター AIソリューション部長。コピーライター時代に、AIに自分の仕事を奪ってもらおうとAIコピーライター「AICO」を開発。博士(科学)。

電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

本連載で発表しているすべてのコンセプトは、実際にビジネスに取り入れられるよう、講演や研修、ワークショップとしても提供しています。ご興味ある企業の方は、Forbes JAPAN編集部までお問い合わせください。

文=福田宏幸 イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN 3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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