マクラーレン、公道も走りやすい「頭脳的な」スーパースポーツカー──McLaren 720S Spider

McLaren 720S Spider

自動車のブランドイメージをひと言で表せる場合がある。F1常勝でもあるメルセデス・ベンツは“インビンシブル(無敵)”であり、テスラなら“リインベンティング(発明が得意)”だろうか。
 
英国のマクラーレンには、“セレブラル(頭脳的)”がふさわしいと思っている。ノーマン・フォスター卿設計の本社社屋から、F1マシン、それに量産スポーツカーにいたるまで、他に類のない発想なのだ。
 
マクラーレンが2019年に発売した720SSpiderを体験すると、ここで述べたことをすぐ理解してもらえると思う。
 
シャシーは高価なカーボンファイバーを使った独自の構造で、軽量かつ高剛性でハンドリングに大きく貢献。V8エンジンは、サーキットで走るとき、シフトアップ時にエンジン回転が落ちて加速が鈍らないよう回転制御する独自の機構が備わる。ドアは、内部を空気が流れてリアのエンジンのために有効な冷却気が入る設計。空力的な付加物は少なく見えるが、静止から100km/hまでの2.9秒の加速と、時速341km/hの最高速は空力性能ゆえだろう。
 
速い。それでいて、楽しい。これも同車の特長だ。見た目の美しさに加えて、個性的な装備の数々。例えば、ガラスの電動格納式ルーフはスイッチでスモークの濃度が変えられ、透明にすればフルオープンにしにくい雨の日でも開放的な気分が味わえる。計器盤は不必要な情報をシャットアウトしたいときは“折り畳んで”スリムディスプレイモードが選択できる。アイデアに満ちた独自の機能主義が光るのだ。
 
サーキットと書いたが、公道でも意外なほど乗り心地がよいので、旅行に行くのにも十分に使える。多用途性も魅力だ。
 
世界中のスタートアップ経営者など若々しい考えを持つ人物が、たとえ高価でも同社のスポーツカーを手に入れようとするのは、共感を持てるプロダクトを近くに置きたいからではないだろうか。動的にも審美的にも知的にも、刺激を与えてくれる。ビジネスマンにとってもよきパートナーになりうる。そこが最大の魅力なのだ。

McLaren 720S Spider

駆動形式 : 後輪駆動
全 長 : 4,543mm
全 幅 : 2,161mm
全 高 : 1,194mm
最高出力 : 530kW(720ps)/7,500rpm
価 格 : 3,930万円(税込み)
問い合わせ : マクラーレン・オートモーティブ

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text by Fumio Ogawa | edit by Tsuzumi Aoyama | photograph by Tsukuru Asada (secession)

この記事は 「Forbes JAPAN 3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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