年間6億円のトップセールスマンから「障害者」に。舩後議員が語る、幸せの掴み方

時計やダイヤモンドなどを輸入する専門商社で働いていた頃の舩後靖彦


舩後が国会議員になってから、国会などのバリアフリー化も進み始めている。例えば、舩後の場合はペーパーを自身の手に持って読むことはできない。だが、資料をモニターで映し出せば、他の議員と同様にその場で資料を読むことができる。そのためにはパソコン導入の検討が必要だ。だが前例はないため、このような課題に直面するたびに検討が必要になる。

また、人工呼吸器を装着していて声が出せないため、舩後はパソコンによる機械音声や秘書による代読、文字盤を使うなどの方法を用いている。このうち、文字盤の場合は、言葉のように早く会話ができないため時間がかかる。だが、議員には質疑の持ち時間が決まっており、その時間内で行わなければならない。

文字盤を使用している時間について、「現在は委員の皆さまのご理解もあり、速記を止めて私の持ち時間が減らない配慮をいただいております。ただ、今後同じように声を出せない障害のある人が議員になった場合、持ち時間の制限などについても引き続き、検討をお願いしたい」と話す。

舩後議員
モニターに映し出された資料を見る舩後議員。2019年12月5日委員会質疑で

舩後は「障害」や「障害者」とは、「障害を持つ人で、何らかの社会的障害を被る者」と捉えている。

上記のような決まりや慣習を通じて、「国会という場、ひいては日本の社会がまだまだバリアフリーになっていないことを感じます。一方で、問題意識を持っている先生方も多くおられることも事実です。バリアが少しずつほどけていることを感じる嬉しさもあります」と語る。2019年度補正予算では、参議院内のバリアフリー化に関する予算が計上され、整備が進むことになった

障害者と健常者。「非仲間」と「仲間」──。

こうした人々の「分断」を解決するためにも、舩後は「誰も排除しないインクルーシブ社会を創生するしかない」と語る。

人はいつ障害を抱えるか分からない。今後も、舩後は政治家として「障害者も健常者も分け隔てなく『円』の内側にいる、インクルーシブ(包み込む/包含する)な社会をつくること」を志し、支援者たちとともに、国に働き掛け、世の中をよりよくするために社会の人々に問いかけていくという。やまゆり園事件のように、第2、第3の植松被告を出さないためにも。

文=督あかり 写真=本人提供

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