京大、東大、そして「LINEで漢方処方」起業。女性薬剤師の『ある決意』

「わたし漢方」創業者/薬剤師 水沼未雅さん

「働き方改革」に「副業元年」、仕事を取り巻く環境は、驚くほど変化を遂げている。働き方も職種もダイバーシティの時代となり、もはや、仕事=その人の生き方といっても過言ではない。なかでも女性は、結婚、出産、育児とライフステージが否応なく変わることもあり、しなやかに、粘り強く、時にパワフルに、自分らしい働き方にたどり着いた方が多いように思う。

2020年1月に出版された『これが私の生きる道!彼女がたどり着いた、愛すべき仕事たち』(世界文化社刊)では、自分らしい幸せな仕事や、固定観念にとらわれない柔軟な働き方を見つけた女性33名にインタビューを行っている。本書の中から、「わたし漢方」の創業者である水沼未雅さんのお話を紹介する。


デジタルヘルスで漢方を!私以外、誰がやる?


──あなたのお仕事は?

薬剤師です。現在は、LINEを使用して、漢方で健康をトータルコーディネートする「わたし漢方」を創業、運営しています。

──起業のきっかけは?

10代の頃から変な咳が出る持病に悩まされていました。眠れないし、テスト中に咳が止まらなくなると周りから白い目で見られるし、ひどくなると肋骨にヒビが入ることも。病院に行っても、内科で咳止めを出されたり、呼吸器科で喘息と診断されたり、耳鼻科で後鼻漏の疑いをかけられたりして、改善することはありませんでした。

15年ほど悩んでいたのですが、あるとき漢方専門薬局でカウンセリングを受け、1時間半以上かけて、足の先から頭のてっぺんまで調べてもらったら、ストレスや身体の冷え、そして生活習慣などに原因があると診断され、それに合った漢方薬を処方してもらったら咳が止まったんです!


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そのとき、漢方薬の力に衝撃を受けました。薬に関わっている自分でも知らないのだから、世の中の人はもっと知らないはず!と思っていたとき、ちょうどデジタルヘルスが勃興してきた頃で、私自身も前職でヘルスケアに関わっていて、デジタルの力でヘルスケアをもっと良くしてゆきたいと考えているところもあり、「デジタルヘルスで漢方を!私以外、誰がやる?」と起業を決めました。

──起業準備中にやっていて良かったことは?

資本金は共同創業者と少しずつ集めました。起業経験がある方が多いので、いろいろ教えてもらいながら準備を進めました。初期投資はほとんどかかってないです。プラットフォームは、チャットボットを作る会社がテストユーザーとして好意で使わせてくださったので、自社でいちから構築せずに立ち上げることができました。あとは私が昼夜を問わずボットのコンテンツ作りに励むだけでした。

漢方というツールで、いかに身体を守っていくか


──仕事をして悩んだことは?

LINEでAIが問診をする、チャットボットを作るのに苦労しました。この仕事は患者さんに感情で寄り添うことが必要なのですが、私は科学者なので、もともとロジカルに物事を考えてしまいがちなのです。最初に私が作ったチャットボットでテスト問診をした周りの人間の感想が、事務的で冷たいとか、論文みたいだとか……散々言われました(笑)。どうすれば患者さんに私の気持ちが伝わるのかとても悩みましたね。思っていたより、文字で気持ちを伝えることは難しく、冷たく伝わりやすいので、伝え方に関しては、未だに勉強中です。

──起業した頃の自分にアドバイスは?

4度の起業経験を経た前職の先輩が「起業するときは、どんどん人に頼るものだ!」と教えてくれました。今は、もっと人に頼れるようになりたいと思いますし、あの頃の自分に、もっと人に頼っていいのだよと言ってあげたいです。
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